第370話「本の話」
「どうして奥さんは自ら命を絶ったの?」
「掠奪を受けた子供たちは無事ではいられません。良くて命があった」
「……大勢の犠牲者が出たのね」
「ええ。優しかった奥さんは、子供の亡骸を見て、心が壊れてしまったのだと思います。そして、自身が人を殺した事に耐えきれなかった。その貴族は震えながら奥さんのことを語ってました。自分が負傷しなければと。ひたすら自身を責めていました」
そもそも掠奪自体珍しいことではなかった。
子供やコネのない人物、そう社会的、肉体的に弱い立場の人間は襲われる確率が高い。
飢えて仕方なく、行為に走る者もいれば、金や自身の目的のために掠奪する者だっていた。
「……」
「……」
二人は迫真の迫ったサラティスの語らいに言葉を失くす。
サラティスの言葉はまるで、その場にいてそれを見ていたかのようであった。
「サラちゃん、その本は何というタイトルなんですか?」
「へ?……。わ、忘れました」
「忘れたの?」これだけ内容を覚えているのに?」
「そ、その」
フィーナとエステリアの視線が眩しい。
「あまりにも内容が衝撃的だったので、内容はしっかり覚えているのですがタイトルがその衝撃で覚えてなかったという……」
「なるほど。思い出したら是非教えてくださいね」
「分かりました」
「でもそうしたら私はどうしたらいいのかしら」
今はまだ子供なので責務は勉学に励むことである。
「フィーナ」
「何?」
「どうしたらいいかじゃなくて、どうしたいかです。まだフィーナは子供なので、まずは勉強です。教科書だけじゃなくて、街を、人を見て、声を聞いてください。それと、階級や出自関係なく部下や大臣などいろいろな人と意見を交わしてください。これは私もお父様によく言われるのですが、まずは相談から初めてください」
「相談……」
「皆フィーナより経験のある方です。フィーナの案の良い所、悪い所、もっとよくなる案などきっと出て来るはずです」
「……ありがとう」
「私だったらいつでも相談に乗りますよ」
「わ、私も平民の意見が必要でしたら、い、いくらでも答えます」
「ありがとう二人とも。ってそうだわ」
「どうしました?」
「サラが休みで学園にいなかったでしょ?ローネって上級生がサラのこと探してたわ」
「あ、本当ですか?ありがとうございます」
三人は風呂に向かい、中でまた語らい、戻り眠りについた。




