第369話「ほんのはなし」
「さっきの話ですが、孤児はうちで引き取りました」
「サラのお家で?」
「はい。将来的に私の使用人になってもらおうかと」
「サラちゃん、何歳なんですか?その孤児の子は」
「見た感じ三、四歳くらいですね。本人が覚えてないので正確なことが分からずです」
「……どうして捨てられたか分かる?」
「いいえ。騎士の方に確認してもらったのですが、その子の行方不明届けもないので一切分からずです。ですが魔人のようなので、親が健在でも変わらないかと」
「いつもそうしてるの?」
「いいえ。今回はいろいろあってたまたまって感じです。普段なら騎士に預けて終わりですよ」
「そう……」
「フィーナ?」
「何よサラ」
「フィーナはまず学んでください」
「へ?」
「私はただの田舎貴族です。ですが、フィーナはこの国の王女様。同じ孤児を保護する行動をしても、周囲に与える影響は違います。良い意味でも悪い意味でも」
「……」
サラティスは知っている。
優しさで腹は満たない。
悪意とは意味がなくても、振りまかれるのだ。
「昔読んだ本なのですけどね」
サラティスはそれを語る。
戦争中、今とは比べられない程の孤児が出た。
とある街のお話だ。
領主に命じられ、その街を統治していた貴族がいた。
一時この街は戦場となり住民や建物に大きな被害が出た。
この貴族は魔族と果敢に戦った。
何とか生き延びたが、二度と剣を持てぬ体となった。
その貴族の妻が旦那の分までと復興に尽力した。
彼女が一番力を入れたのは孤児への救済。
大人であれば、自分でどうにかできるだけの力がある。
だが、子供はそうはいかない。
ある時事件は起きた。
人間の大人による掠奪。
最後は堰が切れ、飢えた大人達が次々と行為に身を委ねた。
道徳では飢えた腹は満たされない。
倫理では寒さに震える体を温めることはできない。
故に力なき子供から奪いとるという安易に走るのは想像ができる。
一番初めとなった掠奪。
若い男であった。
戦場を潜り抜けた訳でも、被害を受け飢えに耐えていた訳でもない。
男はそれなりに裕福で、それなりに幸せであった。
飢えることも、野外で地べたに寝そべり、空気の冷たさなど経験したことがなかった。
そんな男が掠奪をした。
その男が飢えて飢えて、道端の草木を齧り、耐えきれず気付けば行為に手を染めてしまった。
そうであったならまだ素直に泣くことができた。
だが結果的に男の口から出た言葉を訳すとするのなら、自分は決して不幸ではないが、他人が幸せであることが気に食わない。
貴族の妻は男の言葉を聞き終えると、男に止めを刺し、自分も同じ躯になった。
ありふれた悲劇の一頁。
作品へのブックマーク、評価等誠にありがとうございます。
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お陰様で「宿屋の娘は聖女と呼ばれ転生す」を投稿して丁度1年経過しました。
投稿した当時は1年間毎日投稿するなんて微塵も考えていませでした
有難いことにランキングに載ったり、最近教えて頂いたのですが外部サイトにて作品を紹介していただいたようで、ありがとうございます!
これからも投稿続けていくので、何卒よろしくお願い申し上げます。




