第367話「密室、大人と使用人達……」
それ以外の使用人達はセクドと同じくあまり、ぴんときていないようだ。
「これはダヴァン料理長が実験して、確認済みなので間違いないことだ。最近誘拐事件が増えている。皆も知っていると思うけど大規模な誘拐奴隷事件が発覚したばかりだ。こういった能力を持っているということが他に知られた時のリスクを考えて秘匿にする」
皆頷く。
何より一度、無事だったとはいえサラティスが誘拐されている。
あの一件以降警戒をより厳重に行われるようになった。
二人は学園だが、現在屋敷には幼いロザリアもいる。
神経質になるのはいたって当然ともいえる。
ダヴァンが連れてきた少女も余りにも幼い。
例え孤児とはいえ、このような少女が誘拐される未来は想像したくない。
「そしてもう一つ。彼女は毒も色で分かるそうだ」
ざわざわと空気が蠢く。
そして理解した。
職務によって使用人たちが気をつけることは異なれど、主人の安全の確保は前提である。
料理人であれば健康を害する物を入れない。
洗濯であれば、洗った服を主人が身に着け、どこかが気触れたり爛れるような事態を起こさない。
リステッドの主人はしないであろうが、他所の貴族の屋敷でこういった事態を起こせば、使用人は処刑されことだってあるだろう。
貴族の安全を脅かすのはそれだけ重罪なのだ。
つまり、毒を事前に認知できる能力の価値は使用人であれば、誰しも理解できる。
この情報を流すだけで金を得ることだってできるだろう。
確かに契約書を用意するだけの意味はある。
そして、皆一様に納得した。
連れてきたのが、あのサラティスなのだ。
見知らぬ魔族、王女と来て次は未来の使用人ときた。
肴にもできない盛った話であるが、話の主がサラティスであるのなら別だ。
普通であればそのような特殊な能力を持っている人物であれば、疑念や畏怖を抱くこともある。
だが、皆自然とサラティスが連れてきたからと疑問を抱くことなく受けいれていた。
「見ての通り彼女は幼く、孤児ということで慣れないことが多すぎて、皆の負担が増えるだろう。すまないが協力をお願いする」
皆頷いた。
使用人であり、業務の範囲内のことであるので命令すれば済む。
だがこうしてお願いという形で口にする主人を使用人達は尊敬しているし、敬愛している。
言われなくても自分の子供のように接するつもりである。
ヤーミーのお披露目も終わり、屋敷に新しい仲間が加わった。




