第365話「密室、主人と料理長……」
「ダヴァン、お帰りなさい。いろいろとありがとう」
「いえ、お安い御用で」
「あら、そちらの可愛らしい彼女はどなたかしら?」
「やーみー」
「まぁ、ヤーミーちゃんていうのね。私はアレシア。で、こっちが旦那のセクド」
「本当かい、ダヴァン」
セクドはアレシアが来るまでの間に手紙を読んでいた。
「どうしたの?」
「彼女はヤーミー。王都で出会った孤児だそうだ」
「そう……」
「彼女を将来サラティスの使用人にしたいって」
「え?」
アレシアもセクドの口から出た言葉に驚いた。
「アレシア様。こいつは俺が責任を持って立派な料理人に育てます」
「まだ子供よ?彼女が望まない選択肢を選びたくなったらどうするの?」
「その時は彼女の意見を優先し、サラティスは縛ったりしないって。書いてあるよ」
「そこまでのことが読めてしまうのに、連れてきたのね……」
「君に似たんだろうね」
「マリーですかい?」
「でもマリーの時はここまで幼くなかったわ」
「そうだね……」
セクドはふと思い出した。
セクドが魔獣を討伐するために、領内をあちらこちらと移動し、アレシアは代わりではないが、孤児院、学校や市場など領地のあちこちへ視察に行ってくれていた。
ある日の帰り、アレシアが孤児の少女を連れてきた。
普段であれ孤児院に案内するのだが、この子はうちで面倒を見ると言った。
アレシアは使用人にすると言ったが、レザクターが反対した。
孤児なので素性が不明であり、怪しい人物を傍に置くのは好ましくない。
給金が他の使用人に比べて安く済ませられるメリットはあるが、その代わり教育費用が多くかかるので相殺かむしろマイナスになる。
これから世継ぎを生み育てる大事な時期になるので必要以上に警戒していた。
この時はまだ判明していなかったが、この頃ジェリドを身籠っていた。
アレシアはレザクターを説き伏せ、マリーを雇うことになった。
セクドはアレシアの人を見る目を信じていたので、特に反対はなかった。
「ダヴァンはどうして賛成するんだい?有難いことに君はサラティスによく付き合ってくれている。だけど今回は今までと訳が違う。人一人の人生に大きく関わるんだよ」
「手紙には書いてないがよ、ヤーミーは魔人だ」
「そうか」
「そうなの……」
アレシアはヤーミーの頭をそっと撫でる。
ヤーミーは特に警戒することもなく素直に撫でられている。
「でな。こっから先はまじで厳重注意なんだがよ。こいつはどうやら、味が色で見える体質か能力を持ってる」
「味が色?」
セクドは首を傾げる。




