第364話「誘拐じゃないです」
「所で、彼女の身を引き受ける理由は何かあるのですかな?」
「一番は偶然ですよ。偶々こうして巡りあった縁といいますか。ダヴァンが料理長なので」
「なるほど。ダヴァン氏はどう思いで?」
「メノス副隊長殿。私はリステッド家の使用人です。手配されてるようなごろつきであれば、止めさせてもらいますが、そうでないのなら従うまでです」
「そうか」
「失礼致します」
「入れ」
先程の騎士の声が扉の向こう側から聞えた。
メノスが許可を出し騎士が入ってきた。
「ヤーミーさんですが、該当する届はありませんでした」
「早いですね」
騎士が退室してから、三十分程しか経っていない。
「サラティス様、現段階で彼女が該当しそうな行方不明届はありません。考えにくいですが、行方不明届が王都から遠く離れた地で数日以内に出されたのであれば、まだここには集約されていない可能性はあります」
騎士の説明にサラティスも頷く。
「あーなるほど。では届け出があった場合は?」
「改めて報告させて頂きます。因みに報せはリステッドで?」
「はい。お父様の方にお願いします」
「畏まりました」
「因みになんですが、まだ届け出が出てないだけかもしれないじゃないですか」
「ええ。孤児が保護されて三年間、届け出がない場合は保護し養育を希望された方に権利が移ります。もし、その後に届け出が出た場合でも、権利は養育者にあります」
つまり三年後は当事者同士で話をつけろということだろう。
「分かりました。お手数ですが許可証じゃないですけど、関所の騎士さん達に伝わるよう一言手紙なり書いてもらえますか?私は学園なので、ダヴァンと二人でリステッドに帰ってもらうので。行きは一人で帰りに子供を連れていると、誘拐したのでは?とあらぬ疑いが生じるかもしれないので」
「確かに……畏まりました。少々お待ちを」
「メノス副隊長さんお世話になりました」
「いえ。何かあれば、すぐ騎士団へ」
サラティスは手紙を託しダヴァンとヤーミーを見送った。
休みを終え、サラティスが勉学に励んでいる最中、リステッドの屋敷は大騒ぎになった。
「ダヴァン、彼女は一体……」
ダヴァンが屋敷に戻ってくると偶然セクドと出くわした。
「あー。言っておくが攫ってきた訳じゃねぇからな」
ダヴァンはセクドにサラティスが書いた手紙を渡す。
「今アレシア様は?」
「予定がなく、屋敷にいるよ」
「あいよ」
ダヴァンはヤーミーを連れ、ひとまずセクドの仕事部屋に向かった。
廊下で使用人に声をかける。




