第359話「風が吹いた」
「……ダヴァン、これはダメですね。私が子供だからじゃなくて、大半の人がダメかと」
「どれどれ……確かに、辛みと甘味が悪さしあって、気持ち悪さがでる嫌な感じだな」
「こっちは噛むと生臭さが来てダメかと」
「……同意」
大半が微妙か外れである。
それは突然であった。
風が吹いた。
雨雲など辺りにはないのに、それは突如振ってきた。
「きゃ」
「んだ」
いきなり二人の目の前に、現れた。
それは机の上に乗り上げ、皿からショモナモルを盗り、再度飛び上がり、庭に植えられている木の枝に器用に着地する。
そして盗ったショモナモルを口に入れる。
飲み込み終わったようだが、それはまだショモナモルを狙っているようで視線を一切反らさずに、木から姿を消した。
「二度目はねっなに!」
それが飛び掛かってきたのに合わせて、ダヴァンはそれの腕を掴もうと腕を伸ばした。
速度、タイミング的に確実に掴めると思った。
だが、それはダヴァンの動きに合わせて、空中にも関わらず、器用に掴みにくる腕を避けた。
「ぎゃん」
「さすがに二度目は防ぎますよ」
それは机に着地する前に、まるで透明な壁にぶつかったかのように、何かにぶつかり地面に転がった。
「威勢のいいガキだな。ってサラティス様離れてください」
「ふー」
襲撃者の正体は子供であった。
外見から判断すると三、四歳だろうか。
襲撃者は額を切ったのか血が垂れる。
まるで野生の魔獣のようであった。
近くづサラティスを全身で威嚇する。
「大丈夫ですよ」
サラティスは両手を上げ、敵意はないとアピールしながら徐々に接近する。
「サラティス様!」
「大丈夫です。任せてください。ダヴァン声を落としてください」
「……はぁ」
「痛くないですからね」
サラティスの指先が淡く光る。
「どうです?痛みはなくなったかと」
サラティスは子供の目をしっかり見つめながら語りかける。
「……たくない」
「もしかして、お腹がすいたのですか?」
子供は首を縦に振る。
「分かりました。それはショモナモルというお菓子です。せっかくなら美味しいご飯お腹いっぱい食べませんか?」
「そんな知らん奴を誘……」
ダヴァンも口を出そうとしたが、サラティスの強い瞳を見て途中で閉じた。
「いいの?」
「はい。でもその前に、お風呂に入りましょうか。せっかくのご飯が台無しになってしまいすから」
「ふろ?」
「はい。体をばしゃーっとしましょう」
「……つめたい、いや」
「ふふ、冷たくないですよ。温かいお湯です」
子供は髪の毛が膝あたりまで無造作に伸びていた。




