第358話「すぎたことなので」
終わりがないので、ひとまず区切りをつけた。
サラティスは入念に体を洗った。
ダヴァンに釘を刺されたからだ。
明日も籠って試食会なのでどこにも行く予定がないが、もし誰かに会い、体から美味なる匂いを発するのはよくないからだ。
サラティス的にもダヴァン的にも気にしないが、ダヴァンが屋敷を出る直前、アレシアからきつく注意されたそうだ。
体を洗い終わり、湯舟に浸かる。
「あ」
今気づいてしまった。
ダヴァンに提案したナムシャ。
自分の名を入れた物が広まってしまうということに。
兄との想い出が広がるのは嬉しい半面、気付かれないとはいえ名が広まるのは恥ずかしい面もある。
「不思議ですね」
指が水面を撫でる。
何故自分が記憶を持ったまま生まれたのか。
恐らく解明できないだろう。
実証実験をするのであれば、当然都度人が死ぬ必要がある。
なのでするつもりはない。
それに気にしないと決めた。
もう自分はサラティスなのだから。
ネイシャの記憶は引き出しを開ければ、きちんと指に当たる。
指を弾くと、水滴が跳ねる。
「ふぅー。これ以上はのぼせますね」
サラティスは立ち上がり、風呂を後にした。
翌日は少し早く起き、庭にて体を動かす。
「サラティス様運動するのは非常に良いことだが、周りの目ってのも意識した方がいいぜ」
「どういうことです?」
「サラティス様のそれはセクド様に習った護身術の動きだろ?」
「はい。相手がいなくても一連の動きをした方が良いと仰ってたので」
「だろ?俺やセクド様……屋敷の連中なら、ああ運動していて偉いなで済む。だが、学園で同じように朝校庭でやってみろ。最悪変な噂が出るかもしれねぇぜ」
「噂?」
「ああ。動きが本格的で、明らかに同学年の男子より動けるときた。子供とはいえ、周りは女性貴族だろ?」
「なるほど。野蛮だとか言われるかもですね」
「俺的には気にする必要はねぇが、ほらもしここで俺が言わないと、後で何で気付いたのに黙ってのかとかアレシア様に言われるかもしれねぇからな」
「ありがとうございます。大丈夫ですよ。学園だと朝はたっぷり寝てるので」
そしてショモナモルの試食会が始まった。
気分を変え庭に設置されている机に皿をたくさん並べる。
今日はショモナモルに調味料や、香辛料など練り込み新しい味を探すのが主な目的だ。




