第357話「献上するべき」
「献上ですか?食用のワイルボロル、ショモナモルはどちらも珍しいから献上したのは分かりますが、ダヴァンの言った通り、肉屋さんやどっかの飲食店とかがやっててもおかしくないですよ?それを今更献上しても」
「まず、この肉を細かくして丸める。一般的じゃなくて珍しい。確かにこの調理法だけなら、世間の誰かが、うちでもやってる手法だ。貴族様は物を知らないんだな文句が出るかもしれねぇ。だが、ワイルボロルで作る、ワイルボロルの脂身を使うは最新なはずだ。なんせワイルボロルが新しい食材なんだからな。この二つを組ませればいけると思うぜ」
「確かに、ワイルボロルのナムシャですと出せば、また一つリステッドに名物ができますね」
「そうだな。こういのは最初に広めた奴の勝ちだからな」
「献上てどうやるんですか?」
「通常だと、まず自分の住んでるとこか、懇意にしてる貴族に話をつける。それで、その貴族から領主へと話が上がる」
「……うちはこれ不要ですね」
「だな。で、領主から今度は王宮に話を出す。王宮にて関係者が審議して相応しいと判断が下った場合、晴れて王族へと献上される」
「ずいぶん時間がかかりそうですね」
「ああ。だがどこの世にも、抜け道てのはある」
「……コネですか?」
「ああ。幸いセクド様は現在、王の命でいろいろ動いて、直接やり取りしてる。だからその時に王に直接言えば、恐らく通るはずだ。最近の実績を考えればな」
「なるほど。さすがはお父様ですね」
「あ?セクド様はすごかねぇぞ。発端はサラティス様じゃねぇか。それにフィーナ王女様の伝もあるだろ?」
「あー確かに。でもフィーナに頼むようなことはしたくないですね」
フィーナはただの友達である。
まるで友情を利用するようなことはしたくない。
「だろうな。だが貴族として手段の一つってことは隅に置いておいた方がいいからな」
「分かりました。ダヴァン、ナムシャの件任せてもいいですか?」
「あいよ。何かあるかもと覚悟はしてたが、本当にあるとはな」
「なんですかそれ」
「いいですかい?俺はただの屋敷の料理長ですぜ?仕える貴族に出す献立を考え、料理人の勤務時間調整、食材の買い付け、経費申請。それが本来の主な業務ですぜ」
「ダヴァンには感謝してますよ」
「ああ、悪い。別にサラティス様に付き合うのは嫌じゃないぜ。むしろ感謝しているくらいだ。だが、同時に余計な業務が増えるからな。普段の業務との調整とか色々考えると億劫だって思うとこが出てくるんだよな」
「お父様にお休みをたくさん貰ってください」
そして予定は変更され、さまざまな組み合わせのナムシャを作り、どれが一番美味いかの試食になった。
「これはやべぇな。数年、十年単位だぜこりゃ。肉と脂の比率。肉同士の比率。それに肉の叩き具合。ナムシャだけでも組み合わせが多いのに、入れるスープでも変えるとなると」
「料理は妥協しない限り終わりはないですもんね」
「だな。それにこれ、煮込みだがもうちょい形を平らにして焼くのありじゃねかと思う」
「あ。……確かに美味しそうです」




