第356話「ナムシャ」
「はい。それをスープと一緒に煮込んでください」
「……あいよ」
サラティスの指示通り作ったスープと肉包を食べる。
「……いけるかと」
「これは……。これ食用じゃねぇから、雑味があるが、これ食用肉でやったら絶対美味いな。はぁ……」
「どうしました?」
「この調理法は確実に新しいですぜ。まぁ、肉屋などが個人的な賄いで食うとかごくごく一部であるかもしれませんが、貴族の食事にはないですね。それに、この国の一般的な調理法でもない。こいつぁ、また大発明ですぜ」
これは確実にまた忙しくなる案件である。
「どこかの図鑑で?」
「いいえ。ふと思いつきました」
「そうですかい。なら、これの名前は何にしましょうかね?肉球、肉包じゃ芸がなさすぎる」
「ナムシャです」
「……どういう意味で?」
「……ぱっと浮かんだものです」
ネイシャのご飯は、宿で客に出す、余った食材や料理を食べることが普通であった。
時に兄が料理の練習として作ったご飯をネイシャが食べるということもあった。
ある日、兄が客には出せないピーギーのクズ肉を細かく細かく潰し、それを丸め煮込んだものを食べさせてくれた。
貴族である今と違い、毎日肉が食べれるような環境ではなかった。
クズ肉を叩き潰すことで少しでもかさが増す。
煮込むことでスープの味が染みこみ、クズ肉でも美味しく食べられるというアイデアの塊であった。
だがクズ肉。それにお客に出す分ではないため、自由に調味料が使える訳でもない。
味や食感などは改良の余地ありであった。
そこでネイシャは思いついた。
料理によってはお肉の脂身部分を調整したりする。
その切り落とした脂身を肉包の中に入れてみた。
すると味が濃厚になり、肉を食べている舌が喜び踊った。
そしてこれを兄と自分の名前から文字をとり、ナムシャとこっそり名付けた。
調子に乗って、モルの脂身を入れたところを母親に見つかり怒られ、肉包のように頭にたんこぶができたのは遠い想い出。
「じゃ、早速ワイルボロルのナムシャスープ作ってみますかね」
ダヴァンは手際よくスープを作る。
「これなら主力商品として出せますね」
「……それだけじゃねぇ。これピーギーやコココココの肉にワイルボロルの脂身を入れれば、低価格でいけるな」
「ですね。ワイルボロルは脂身も多いですから、捨てるだけの脂身を売るなんてこともできますね」
「……サラティス様」
「何です?」
「頭の痛ぇ話だけどよ」
「はい」
「これはセクド様に相談して、王家に献上した方がいいな」




