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宿屋の娘は聖女と呼ばれ転生す  作者: 紅羽夜


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355/469

第355話「試食会」

「あーどうなんだろうな。タイミングと若い女性だと、旦那が面接しなかったりするな。っとそろそろベッドに行ってくださいな」

「はーい。おやすみなさい」

「いいですか?夜更かししないでくださいよ。ベッドに行けと言われただけとか屁理屈はなしですからね」

「分かってますよ」


 サラティスは知っている。

 試食会とはただ食べるだけと思いきや、実は意外と体力がいるのだ。

 それに食べることを考えると適度な運動もしなくてはいけない。

 言われずとも寝るつもりであった。

 朝起きると既にダヴァンが朝食を作っている最中であった。


「何か手伝いましょうか?」

「……もう並べるだけだから、座ってくださいな。てかいいですか?他の場面で手伝うなんて言わないでくださいよ?」

「分かってますよ」


 サラティスは貴族である。

 そのような発言は他の貴族がいたとしたら、確実に見下される。

 それに使用人によっては、お前に任せることができないという失望の報せになる。

 朝食を済ませ、ダヴァンは支度のために貸し屋敷を出て行った。

 待っている間、サラティスは勉強と運動に励んだ。

 ダヴァンが買い物から戻ってくると、早速試食会が始まった。


「これがサラティス様が要望したワイルボロルのニュール煮込みだ」

「……ちょっとしょっぱいですね」

「だな。これは……他の調味料と煮込み時間調整すればもっと穏やかにできそうだな」

「そういえば、保冷庫に見たことないお肉が結構あったんですが、あれは何の肉です?」

「あれは逆塔で捕ってきた魔獣の肉だな。全部食用じゃねぇから、店で売ってる肉に比べると不味い。だが、食える肉だ。きっとサラティス様なら食ってみたいと仰ると思ってな」

「ありがとうございます」


 サラティスはダヴァンから、魔獣の肉から魔獣の性質など教えて貰いながらその肉を食べた。

 初めてなのでシンプルに焼いたものを食べた。

 どの肉もダヴァンが言う通り、実に野性味の強い肉であった。


「この肉片はどうするんです?」

「このクズ肉は、捨てるしかねぇな。食用なら煮込んでスープの味つけに使えるが……これはとてもじゃねぇが、煮込んでも食えねぇからな」

「そうです……あ」


 ふと思い出した。

 それは遥か遥か遠い記憶。

 まだ、ネイシャが村の外を知らない頃の温かい想い出。


「ダヴァン、肉をこれ細かく切って貰えます?」

「あいよ」


 ダヴァンは包丁でクズ肉を切っていく。


「もっとです」

「これ以上は……液っぽくなって完全に食えなくなるぜ?」

「大丈夫です」

『トントントン』


 包丁で肉を刻む……叩き潰す音が響く。


「有り難うございます。ワイルボロルの脂身を切って、肉片で包んでください」

「……こんな感じで?」


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