第355話「試食会」
「あーどうなんだろうな。タイミングと若い女性だと、旦那が面接しなかったりするな。っとそろそろベッドに行ってくださいな」
「はーい。おやすみなさい」
「いいですか?夜更かししないでくださいよ。ベッドに行けと言われただけとか屁理屈はなしですからね」
「分かってますよ」
サラティスは知っている。
試食会とはただ食べるだけと思いきや、実は意外と体力がいるのだ。
それに食べることを考えると適度な運動もしなくてはいけない。
言われずとも寝るつもりであった。
朝起きると既にダヴァンが朝食を作っている最中であった。
「何か手伝いましょうか?」
「……もう並べるだけだから、座ってくださいな。てかいいですか?他の場面で手伝うなんて言わないでくださいよ?」
「分かってますよ」
サラティスは貴族である。
そのような発言は他の貴族がいたとしたら、確実に見下される。
それに使用人によっては、お前に任せることができないという失望の報せになる。
朝食を済ませ、ダヴァンは支度のために貸し屋敷を出て行った。
待っている間、サラティスは勉強と運動に励んだ。
ダヴァンが買い物から戻ってくると、早速試食会が始まった。
「これがサラティス様が要望したワイルボロルのニュール煮込みだ」
「……ちょっとしょっぱいですね」
「だな。これは……他の調味料と煮込み時間調整すればもっと穏やかにできそうだな」
「そういえば、保冷庫に見たことないお肉が結構あったんですが、あれは何の肉です?」
「あれは逆塔で捕ってきた魔獣の肉だな。全部食用じゃねぇから、店で売ってる肉に比べると不味い。だが、食える肉だ。きっとサラティス様なら食ってみたいと仰ると思ってな」
「ありがとうございます」
サラティスはダヴァンから、魔獣の肉から魔獣の性質など教えて貰いながらその肉を食べた。
初めてなのでシンプルに焼いたものを食べた。
どの肉もダヴァンが言う通り、実に野性味の強い肉であった。
「この肉片はどうするんです?」
「このクズ肉は、捨てるしかねぇな。食用なら煮込んでスープの味つけに使えるが……これはとてもじゃねぇが、煮込んでも食えねぇからな」
「そうです……あ」
ふと思い出した。
それは遥か遥か遠い記憶。
まだ、ネイシャが村の外を知らない頃の温かい想い出。
「ダヴァン、肉をこれ細かく切って貰えます?」
「あいよ」
ダヴァンは包丁でクズ肉を切っていく。
「もっとです」
「これ以上は……液っぽくなって完全に食えなくなるぜ?」
「大丈夫です」
『トントントン』
包丁で肉を刻む……叩き潰す音が響く。
「有り難うございます。ワイルボロルの脂身を切って、肉片で包んでください」
「……こんな感じで?」




