第354話「のばすかそるか」
「それって、本当でも無実でも噂が広まって仕方なくですよね?貴族は怖いですね……」
「……リステッドで暮らすからと油断しねぇでくださいよ。きっとこれからもっとリステッドは発展するかと。それに群がるのは魔獣だけじゃないんで」
「……対貴族はケイに任せますよ」
「無理だな」
「……ですね」
「あの坊っちゃんは人が善すぎるからな。まぁ、大人になるまでに一皮むけてがあるかもしれないが」
「私的には人を騙すような大人には育って欲しくないですね」
「育ってって……。まぁ俺的には二人ともですけどね」
「て、ダヴァン、後ろ向いてください」
「何するんです?」
「髪をしっかり乾かさないと」
サラティスの魔術でダヴァンの髪を乾かす。
「その魔術って地味に便利だな」
「ですね。そういえば、ダヴァンて髭は剃らないんですか?」
「あー。サラティス様はお嫌いで?」
「いえ、別に好き嫌いはないですね。あー、でも手入れせずに伸び放題とかは気になりますね」
「なるほどな。サラティス様には一生縁の無い話だけどな、髭を処理してつるつるにするだろ?」
「はい」
サラティスはぷっと笑う。
「ったく。で髭は勝手に生えて、伸びてくる。それがまた早いんだなこれが。ある程度伸びると速度は落ち着くんだが、それまでぐんぐん伸びてくる」
「そうなると、つるつるになるように都度剃るか、手入れができるまで待つ必要があるんですね」
「そうだな。それとある程度髭がある奴が剃ると、下手すりゃ別人に見えるだろ?」
「……そうかもですね」
「サラティス様には経験ねぇことを願ってるが、髪の毛長いだろ?」
「はい」
「何か緊急事態が起きて逃亡するとする。その長い髪をばっさり切ったら?ずっとは無理かもしれねぇが、その場をやりすごすならできるかもしれねぇだろ?」
「……確かに見知った相手ならともかく、情報でしか知らない襲撃者なら誤魔化せるかもですね。……ダヴァン、言ってください。黙っていれば罪は重くなりますよ」
「これは俺が悪いが、違ぇからな。捕まるようなことは……してねぇ。いや、そんな顔したってしてないですからね」
「……さすがに信じますよ。お父様ならともかく、レザクターを騙すのは難しいかなと」
「それはそうだな。旦那にビビらねぇのはアレシア様と、サラティス様くらいだからな」
「へ?ダヴァンも怖いんですか?」
「あのな……あーでもそうか」
「なんです?」
「いや、リステッド家の使用人は余り顔が変らねぇからな」
「なるほど。新人さんが多いと怖いレザクターが見れるってことですね」




