第353話「いい匂いです」
「『炙れ』……うお」
「食欲がそそられる匂いですね」
「ああ、これ他の生魚でもやってみてぇな」
炙り始めるとじゅっと音がし身がぶくぶく震える。
そしてキッチンがすぐに香ばしい匂いに包まれる。
「……最高ですね」
「……だな。さて、本題に入るか」
まず小さな小皿をたくさんならべ、調味料などを入れていく。
そして、そこにニュールを入れて軽く混ぜ舐める。
「ふと思ったのですが、恐らく、かなりの確立で外れだと思うのですが、薬草系を入れてみたくないですか?」
「入れてみたくねぇですね。いっておきますが、毒にでもならん限り使い切る前提だぜ?」
「もちろんですよ。これラトォス草を漬けておくのはどうですか?」
「やりたいことは理解しました。肉と合うんじゃねぇかってことですかい?」
「はい。外れてた時は拷問でしょうけど、やってみる価値あると思います」
「確かに、あのゴミ扱いのワイルボロルが化けたんだ。期待してもいいんじぇねかはありますね」
「では、それで」
サラティスはダヴァンとああだこうだ、意見を交わしながらニュールを作る時に混ぜる調味料を決めた。
「そうだ、ダヴァン」
「なんですかい?」
「今日の夜ご飯は私が作ってもいいですか?」
「……いいですけすが、何作るつもりですか?」
「野菜炒めとか簡単なのですかね」
「あいよー」
サラティスは問題なく野菜炒めや、卵焼きなど作り終えた。
「どうです?」
「……味は美味いと思いますよ。ただ、どこぞやの屋敷で貴族に出すであれば、ギリ出せないかなってレベルかなと」
「なるほど。道は険しいですね」
「サラティス様は振る舞われる立場ですからね?てか、やっぱりなんだよなー」
「なんです?」
「貴族じゃなくて、これ食堂で出すなら上出来だからな。やっぱり食って思うのが食堂なんだよな」
「それはきっとプロから見て素人、でも下手くそではないくらいだから、そう思うだけですよ」
「ごちそうさん。片づけはやっておくので、風呂入ってきてください」
「はーい」
サラティスは鞄から着替えを風呂場に持っていき、風呂に入る。
「はぁー……」
かなり久しぶりの風呂のような気がした。
学園では毎日入っているが、大浴場であり誰かしら人がいる。
完全に一人で入るのは実に久しぶりだ。
『チャポン』
湯舟に手をいれ、出す。
水面が揺れ、浴槽から水が零れる。
「水はこんなに近くにあるんですけどね……」
風呂を出た。
ダヴァンが風呂から出てきた。
ここは貴族向けの貸し屋敷である。
使用人専用の風呂があり、そちらをダヴァンが使った。
「気にならないかもしれないが、気にしてくださいよ。非常時ならともかく、何もない日常なら。俺は縁ないですが、例えば女性貴族が使用人と男女の仲だと噂され不貞だと身分剥奪されたりとかあるんですから」




