第352話「ギドン」
「あるぜ」
「ダヴァン!」
「ここは王都だからな。入手は可能だ。それに資金もセクド様にたんまり貰ったからよ」
屋敷の賃貸費用などはサラティスが払った。
払わせて欲しいと頼んだ。
「これだ」
ダヴァンが既に処理を終えていたようで、備え付けの保冷庫から魚の切り身を取りだす。
「ダヴァン、これは食べれるのですか?」
ダヴァンが取りだした皿に置かれた切り身の色を見てだ。
魚は赤身か白身か黒身があるのはサラティスもよく知っている。
赤身と白身で違うのは泳ぐ種類が違く、肉まで血が入っているかどうか。
黒身は魔力の都合で黒くなる。何故かまでは知らないが。
その切り身はなんと、緑色をしていたのだ。
鱗なら理解できる。
だが鱗がついているようには見えない。
腐って変色してると言われたら信じてしまうだろう。
「ああ。腐ってねぇから安心しな。この魚はギドンていう川魚でな。川でも深い所、薄暗い洞窟などに流れる川とかに生息してる。血抜きをミスると途端に食えなくなるんだ。しかも冷凍保存しても食えるのが持って一日、二日。それ以上経つとこの身の緑色が抜けて、味がほとんどしなくなる。毒袋が体内にあるから扱いの難しい魚で、食用にはまず出回ってねぇ」
「そんなのがいるんですね。因みにこれはどうやって手に入れたんですか?」
「捕ってきた。逆塔にちっと寄ってきてからな」
「そうなんですね。では素で食べても?」
「ああ」
パクリ。
サラティスは口の中に入れる。
ハムハム。
「……美味しいですね。見た目に反してさっぱりとして歯ごたえがありますね」
「色が濃いのに意外と味は淡泊でな。表面を数秒炙って食うのが一番でさ」
「それは最後にとっておきましょう」
ニュールにちょんちょんと、ギドンの身をつけ口に入れる。
「あら」
「お」
二人は口に入れ、ギドンが胃に向かい始めるとお互いの顔を見た。
「美味しいですね」
「ありだな。むしろ炙るより美味い」
「これニュールつけた状態でギドン炙ったら猶更では?」
「これは試食じゃねぇってのにな。ずいぶん当たりを引いちまったぜ。『炙れ』」
じゅっとギドン炙る。
ギドンの身から香ばしい匂いが漂い、火で炙られギドンの身が少し反る。
炙ったギドンを口に入れる。
「……美味しいですね。何もつけてないのに味がはっきりしました」
「だろ。程よい脂が感じられるからこれが今までは一番だったんだけどんな」
ダヴァンはギドンの身にニュールを塗る。
「調理過程はなかなか見せれないやつですね」
身が緑色なのだ。
その様子はグロテスクである。




