4話 猫の町
コムギに連れられて町の中を歩く。
カフェに雑貨屋さん、服屋……
俺のいた所と変わらない、ただ人の姿だけが見当たらない。
小さい子供が、お母さんに手を引かれて歩いている。
こっちを指差してる
「お母さん!あの子、尻尾もお耳も無いよ」
「あら、あれは人間よ迷い人ね、最近は全然見なかったのに珍しいわね〜」
「にんげん?迷い人〜?」
「迷子になっちゃった人って事よ」
「迷子なの!かわいそう!早くお家に帰れると良いね!」
「そうね〜」
そんな事を言いながら、通り過ぎて行った。
迷子か……確かにそうだな。
「ほら!ツカサこっちよ!」
少し先に進んでいたコムギに呼ばれて、駆け寄る。
「ここで、必要な雑貨買いましょう」
「日用品店みたいなとこか」
店に入ると、たくさんの商品が並べられている。
「ツカサも自分用のコップとか選んでね」
「自分のコップ……どれが良いかな」
「あ、これなんかツカサに似合うんじゃない?」
コムギが勧めて来たのは、空のような青い色で、真ん中にたんぽぽの綿毛の絵が描いてあった。
「うん、良いね。これにするよ」
「じゃあどんどん、必要なものを選びましょ!」
ある程度この店で日用雑貨を取り揃えられた。
「後は、服かしら?」
「うん、着替えとか持って来て無いんだけど、俺が来れる服って売ってあるの?」
「ちょっと待ってね。確かマスターが、ツカサの服はここに行ってみなさいって、メモに地図を描いてくれたの」」
コムギがメモの地図を見ながら歩き出したので、後ろを着いて行く。
暫く歩いた先には、少し古い感じの服屋があった。
「こんにちは!」
返事がない……
「……いないのかな?」
「こんにちはー!」
「はいはい、ちょっと待って下さいね」
奥から、ゆっくりとした足取りで、毛が長い猫が現れた。
「おや、お客さんかい?ん?君は……人間かい?」
「はい、そうです」
「そうかい、そうかい」
「おじさん、マスターに聞いたんだけど、ここって人間用の服があるの?」
「マスター?」
「あ、マスターは珈琲屋の」
「ああ!君は月の滴のところの子か。じゃあこっちの子も?」
「うん、ツカサは私が見つけて、お店に住み始めたの」
「うんうん、君は迷い人なんだね…」
「はい」
「ああ、それで洋服だったね、もちろんあるよ。昔は迷い人もよくいたからね。少し待ってなさい」
そう言って、奥に入って暫くすると、幾つか服を持って来てくれた。
「君が着れるのはこの辺りだろう、少し大きいものは、直してあげるから、あそこで着てみると良い」
レジの横を見るとカーテンで仕切られた試着室があった。俺はいくつか試着をして、大きすぎるものは直してもらうようにお願いした。
「出来上がったら、店に連絡してあげるよ」
「よろしくお願いします。あ、あの!」
「ん?」
「おじさんは、前にいた迷い人がどうなったか知ってますか?」
「うーん、みんな帰ったんじゃなかったかなぁ?気づいたら、段々見かけなくなっていたなぁ」
「そうですか……」
「君もすぐに帰れるさ」
俺はおじさんに挨拶をして、店を出た。
「やっぱり、あまり詳しく知ってる人はいないのかな」
「まだわからないじゃない!きっと誰か知ってるわよ!」
「そうだと良いんだけど……」
「ほら、もうお昼よ!お昼ご飯を食べたら、午後からはお店の事を教えるから」
「うん、わかった」
俺とコムギは月の滴に帰ることにした。
店に着くと、丁度お昼休憩の時間で、マスターが昼食の準備をしてくれていた。
「マスター!ただいま!」
「ただいま」
「おかえり、コムギ、ツカサ。必要なものは買えたかい?」
「はい、買えました。ありがとうございます」
「それは良かった。では昼食を食べたら、お店の説明をするからね」
「わかりました」
マスターが出してくれたのは、フワフワな卵に、ケチャップがかかった凄く美味しそうなオムライスだった。
「仕事内容だけど、ツカサはお店で働いた事あるかい?」
「あ、去年、知り合いの食堂を少しだけ手伝った事があります」
「うん、それなら殆どやる事は変わらないかな、注文を聞いて、運ぶ、片付けをする」
「それなら出来ると思います」
「細かい事は、コムギとネロに聞いてくれたら良いよ」
「ツカサ!なんでも聞いてね!」
「でも、コムギって結構注文を間違えるよね」
「そ、そんな事ないわよ!」
「この間、別々のお客さんが頼んだメニュー、反対に出してたでしょう」
「…」
俺はマスターをチラリと見ると、マスターは目を細めて二人の話を聞いていた。
「さあ、みんな食べ終わったね、午後からも頑張って。あ、ツカサ」
「?はい」
「これを使って」
俺はマスターから受け取ったのは、真っ黒の生地に、裾の方に黄色い糸で月と滴のマークが入ったエプロンだった。
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