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『月の滴』と猫と僕  作者: 洸夜 真琥


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2/14

2話 月の滴

コムギに連れられて歩いていると、確かに人間は見かけない。

珍しいのかすれ違う時にチラチラと見られているが、俺の方も辺りをキョロキョロと見てしまっている。


町の様子は俺のいた町とあまり変わらない気もするけど、車とかは走って無いし、見たこともない店なんかもたくさんある。

変な感じだ……


「ほら着いたわよ!」

「ここ?珈琲屋『月の滴』?」

「そう、私ここで働いてるのよ。マスターに紹介するから入って」


コムギに言われるまま中に入った。

中はレトロなクラッシックな感じで落ち着いた雰囲気だ。


「マスター!」

「おや、コムギおかえり」

「ただいま!聞いて!私迷い人拾ったの!」

「迷い人……もしかして後ろの子かい?」


マスターと呼ばれた灰色の猫がこっちを見たので、ぼくは軽くペコリと頭を下げる。


「こんにちは……」

「うん、こんにちは。で、どうしてコムギは彼をここへ?」


マスターは俺の挨拶に、目を細めて挨拶してくれた、猫なんだけどなんか、凄く年上の男性みたいだ。


「お願いマスター!彼をここに置いて欲しいの!」

「!え?」

「コムギ、彼もビックリしてるようだけど説明したのかい?」

「……してないかも」

「コムギがちゃんと説明して、彼が納得したら。僕はここで彼を保護するよ」

「わかった。ごめんねツカサ、ちゃんと説明するね」

「うん」

「えっとね、とりあえず、あっちにいるのはマスターでここの珈琲屋の店長なの。それで、ツカサは住むところも無いでしょ?だから、ここで住み込みで働けば良いと思ったの。それに、マスターは物知りだし、ここにいればお客さんから色んな話も聞けるし…どうかな?」


俺はコムギの話を聞いて、考えた。

この世界にいつまで居ることになるのかわからない、帰る方法も探さないといけない。

一人ではとても無理だろう。

でも、ここならマスターも良い人?猫?のようだし……


「マスター」

「決まりましたか?」

「俺を住み込みで雇って下さい」


マスターは俺をじっと見つめた後、目を細めて頷いてくれた。


「では、今日からツカサはここの従業員ですね。3階の部屋が一つ空いていますので、そちらを使って下さい。仕事は、コムギがちゃんと教えるように。もちろん僕に聞いても大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

「ツカサ良かったわね!」

「じゃあ、とりあえず部屋を案内するわね!」


マスターから、部屋の鍵をもらいコムギについて3階へ上がった。


部屋の鍵を開けて、中に入るとワンルーム部屋が広がっていて、ベットとテーブルなど最低限のものは揃えてあった。


「ここ客室なんだけど、誰も泊まらないからほとんど使ってないのよ。あ、私もここに住んでて、向こうの角の部屋を使ってるの。家具とかは一応あるから、足りないものは後で教えてね!私はいったんお店に戻るから、落ち着いたら顔を出してね」

「わかった」


コムギが部屋を出て行くと、俺は部屋を見渡して、奥にある窓へ近づいた。窓を開けて、ベランダへ出ると、外の風景が広がっている。


「俺の町とは違う……本当に夢じゃないのか……」


目の前に広がる町並みは俺がいた町によく似ている。でも高いところから改めて見ると、至るところが違っていて、俺は暫くぼうっとその風景を眺めていた…。


「迷い人か……」



気持ちが少し落ち着いたところで、一階のお店に降りて行く。


「あ、ツカサ!マスター」

「うん。ツカサ君こちらに座って。飲み物は珈琲で良いかい?」

「はい」

「今、丁度お店は休憩時間に入ったから、ツカサの話を聞かせて欲しいの」

「話し……」


何から話せば良いんだろう。


「ツカサの自己紹介からでも、こちらにくる前の事でも。大丈夫、ちゃんと聞きますよ」


マスターが、珈琲を俺の前に置きながら、そう声をかけてくれた。


「えっと、俺の名前は、神谷 司です。年齢は17で、学校の帰りに電車に乗ってたらいつの間にか眠っちゃって、起きてから慌てて降りたら、こっちにいました」

「それで、私が見つけて声をかけたの」

「ふむ。状況は分かりました」


俺は自分の事を話すと、マスターの入れてくれた珈琲を手に取った。湯気から引き立ての豆の匂いが香る。一口飲むと少し苦くて、俺はカウンターにあるミルクと砂糖を少し入れて飲んだ。

カップを置くと、マスターに質問してみる。


「コムギが俺の他にも来た人がいるって聞きました、その人達はどうなったかマスターはしってますか?」

「そうだね、今までもこちらに来た人はいるし、こっちへ残っている話もあるし、帰ったと言われる人もいるみたいだけど、本当のところは分からない」

「帰る方法はあるんですか?」

「うーん、それは僕も分からないな」

「そうですか」

「ツカサきっと大丈夫よ!私も協力するから、ね?」

「コムギ、ありがとう」

「手伝いは明日の午後からで、良いよ。午前中はコムギと買い物に行っておいで」

「ツカサ、私が町を案内してあげるからね!」

「でも、俺お金そんなに持ってきてない……」

「最初の生活に必要なものは私が建て替えておきますよ、その代わり明日からしっかり働いてもらいますから」


そう言ってマスターは俺にウインクしてくれた。

よろしければ是非、ブックマーク、評価をお願いいたします!


他にも、長編・短編、書いておりますので、読んで頂ければ幸いです♪


感想も頂ければ幸いです。

これからもどうぞ宜しくお願いします。


最後まで読んでいただきありがとうございました!

少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです!

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