14話 猫達のお祭り(後半)
神社の中に入ると、そこはさっきまでの賑やかな祭りの雰囲気がなくなり、厳かな空気が流れていた。
舞台を囲む様に篝火が焚かれてる。
「そろそろ、神事がはじまるよ」
ネロが言うと、サツキさんが出て来て祝詞を唱え始めた。
サツキさんが祝詞を唱え終わると、入れ替わる様に今度は、お面をつけたユキさんが現れた。
どうやら巫女舞を踊るみたいだ。
ユキさんは、笛の音に合わせて鈴を片手に踊り始めた。
シャンシャンとなる鈴の音と笛が合わさって、ただでさえこの不思議な猫の世界にいるのに、目の前の踊りを見ていると、さらに不思議な感覚に囚われる。
ぼうっと眺めていると、不意にお面越しのユキさんと目が合った様な気がした。
こっちを見たユキさんの目は、手伝いの時とは違う何か別の人の様に感じた。
たぶん、この雰囲気のせいだと思うけど……
そのままただ見つめ続けているといつもの間にか踊りも終わっていた。
「ユキさん綺麗だったわね〜」
「うん」
「私も巫女さんやってみたくなっちゃう」
「え、コムギ巫女さんになるの!?お店は!?」
「もう!ネロったら本気じゃないわよ!ちょっと素敵で一回やってみたいって言ってみただけよ」
「あ、そうなんだ……良かった」
「ツカサはどうだった?」
「うん。なんかわかんないけど、まるで神様が踊ってるみたいだった」
「うんうん」
そんな事を話していると、肩を叩かれた。
驚いて振り返ると、帽子を被った黒い猫が立っていた。
「君がツカサくんかな?」
「え、あ、はい。そうです……もしかして、山さん?」
「確かに、皆んなからそう呼ばれてるね。君が僕を探してるって皆んな言ってきたからね、僕に用事があるんだろう?」
「あ、はい!あの、その……」
「ここじゃ落ち着かないね、向こうに静かなところがあるからそこへ行こうか」
聞きたい事がすぐに言葉にならない俺を見て、山さんは落ち着いて話せる場所へ連れて行ってくれた。
そこは神社の境内の隅の方で、休憩でができる様になっていた。
俺と山さんはそこへ座った。
「ここならしっかり話が出来ると思うよ」
「ありがとうございます」
「じゃあ改めて、自己紹介をしようか。僕は山吹、みんなから山さんて言われてるよ」
「俺は、ツカサです。でこの二人はコムギとネロです」
「うん、よろしくね」
「よろしくお願いします」
「それで、どうして僕を探していたんだい?」
「俺、迷い人みたいで、最近ここへ来たばかりなんです。それで帰り方がわからなくて……いろんな人に聞いてまわって、でも誰も知らなくて……俺の他には人間も見当たらなくて……。そしたら山さんが前に迷い人と暮らしてたって聞いて、もしかしたらその人まだ一緒にいるんじゃないか、話せるんじゃないかって思ったんです」
山さんは、俺の説明を最後までしっかり聞いてくれた。
「そうか、君は最近来た迷い人だったんだね。確かに近頃は迷い人を見かけないからね、一人で不安だっただろう……」
そう言って山さんは俺の頭を撫でてくれた。
俺は山さんに頭を撫でられた事で、やっぱり今まで我慢していたんだろう不安が一気に溢れてしまい。
涙が溢れるのを止められなかった。
「ツカサ……」
「……」
コムギとネロの心配そうな声も聞こえていたが、俺は涙を止められなかった……
ようやく涙が止まったところで、俺は少し恥ずかしいと思いながら、黙って待ってくれていた山さんに声をかけた。
「すみません……」
「大丈夫だよ、突然知らないところに来たんだ。しかも君の様なまだ若い子が。僕が初めて会った迷い人は君より少しだけ大人だったんだけど、やっぱり不安だったみたいでね、最初は良く泣いていたよ。情けないって言ってたな」
「その人どうしたんですか?」
「うん、結論から言うと、今は僕と一緒にいない」
「え、それじゃ……」
「でも、どうしているか知っている」
「「「え」」」
「順番に話すね」
「はい……」
そう言うと、山さんはゆっくりと話し始めた。
「最初に彼を見つけたのは、同じ様に祭りががあった日でね、祭りが終わろうとしてる時に彼を見つけたんだよ」
その時、俺達の頭上で、ヒュ〜っと音がしたと思ったらドンッと大きな音がして、大きな花火が打ち上がった。
俺達は思わず花火の方を向く。
「こんなふうに、彼も花火を見ていたんだ。暫く近くで見ていたんだけど、花火が終わってもそこに立ったままだったから、思わず声をかけたんだよ。そしたらやっぱり迷い人みたいでね、僕が見つけんだから、これも縁だと思って、一緒に過ごす事にしたんだ」
山さんは、夜空に上がる花火を眺めている。
「彼も最初は君みたいに帰る方法を探していたんだけどね……。僕は元々色んなところを旅していてね、彼も誘って旅に出る様になったんだ。彼も色んなところに行く事で手掛かりを探していたんだろうね……」
「それから旅を始めてだいぶ経ったころに、彼が随分気に入った場所があってね。その後、彼が帰る方法を探すのを止めるって言って来たんだよ。僕は帰る方法が見つかったのかと思って聞いてみたんだ」
俺は山さんの言葉を聞き逃さない様に黙って聞いていた。
いつのまにか手をぎゅっと握りしめていた事にも気づいてなかった。
「彼は、『分からなかったけど、なんとなく分かった』と言ったよ。その後、そこに住むって言ったから、僕は彼とはそこで別れたんだ……」
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