まずは形から
朝、自宅のベッドで目が覚めると、暴力的なほどの美男子が部屋の中央に立っている。
こんな状況、私の人生であるとは思わなかったなぁ…などと考えていると、美男子もとい十兵衛がこちらに鋭い眼光を向ける。
「遅い!!あと20分は早く起きろ!!」
「で、でもまだ目覚まし鳴ってないし…」
「でもじゃない!明日からは必ずもっと早く起きろ!ほれ!歯を磨いて顔を洗え!!」
「は、はいぃ!!」
私は急いで洗面台に向かう。
実をいうと、この何年かは顔も洗わず、起きたらそのまま化粧をしていた。
そんな自分のものぐささに呆れつつ、十兵衛に怒られないように手早く歯磨きと洗顔をすませ、急いで居間へ向かう。
「戻りました!」
「よし、では飯を食え!テレビやスマホは見るなよ!」
「えぇ〜…てか、テレビとかスマホとか知ってるんですね…」
「お前がいつも見たり聞いたりしているだろう、嫌でも覚える」
「あはは…」
「どうでもいいがお前…野菜は食わないのか?」
「え?シリアルで食物繊維とれれば十分じゃないですか?」
「たわけ!野菜や海藻を食わないと、糞が出ないだろ糞が!」
「ちょ…これから朝ごはんなのに糞とか言わないでくださいよ……」
「…ところで、俺と最初に顔を合わせた時は顔を隠していたのに、なぜ今は平気そうにしているんだ?」
そういえば確かにそうだ。
十兵衛のあまりの美しさに、思わず顔を覆ってしまった私であったが、なぜか今は平気で面と向かって話せる。
「た、確かに…うーん、なんででしょう……あ!」
「なんだ?」
「多分、ほとんど他人とはいえ、親戚だと分かったからですね!」
「お、お前……もしや内弁慶というやつか…?」
ドン引きする十兵衛をよそに、簡単に朝食を食べ終えると、
カーテンレールに干してあったものから適当に服を選び、これまた適当に着替えた。
「おいおいおい!お前!」
「はい?」
「服は乾いたらきちんと仕舞わんか!あと昨日は晴れていただろう、外に干せ!」
「えぇ〜…分かりました……帰ったらやりますね」
そんな様子の私を見て、困り果てた表情の十兵衛がなぜか可笑しくなり、バレないようにこっそり笑う私なのだった。
「じゃ、いってきまーす!」
「おい待て」
「はい?」
「俺もついていく」
「は……?会社にですか?」
「俺は守護霊だ。そもそもお前からあまり離れることはできない。だが風呂や便所は覗かんぞ」
「そうなんですか……って、当たり前じゃないですか!!」
マンションの玄関前で大声を出した私に、他の部屋の住人が何人かこちらを振り向き、恥ずかしくなった私は勢いよく玄関を閉めて出勤するのであった。




