成仏ってなーに?
歩道橋の上で、突然目の前に現れた超美形の自称悪霊と、39歳独身女の私が手を取り合っている。
こんな状況を誰が予想できただろうか?
しかも、悪霊は私を幸せの絶頂にしてくれる代わりに、自分を成仏させろと言っている。
これまで霊など見たこともなく、ましてや仏教や神道など、宗教的なものに興味もない私には、成仏の方法など検討がつくわけもなかった。
「成仏って…具体的に何をすればいいんですか…?」
「お前、それが分かったら俺もこうして苦労していないわ」
そういうものなのか…と、これからのことが少し思いやられた私だったが、気になることはまだいくつもある。
「というか、悪霊…さんは何者なんです?なんで私はあなたが見えるんですか?」
「一度にいくつも質問するな。まぁいい…俺はお前の守護霊だ。だから主人が危機に陥った時には見えることもある」
「守護霊…?悪霊じゃないんですか?」
「悪霊だったらお前の自害など止めず、見殺しにするわ」
「はぁ…?自害…?」
詳しく聞いてみると、どうやら悪霊改め私の守護霊は、歩道橋の上で泣いていた私を、飛び込み自殺の志願者だと思ったらしい。
「紛らわしいことをするな!!守護霊は主人が寿命以外で死ぬと成仏できないのだ!!」
「す、すみません…」
成仏できないなどと、そんなことは知ったことでないが、どうやら私に悪意は無いようなので、とりあえず謝ることにした。
「もし私が自殺すると、どうなるんですか?」
「次の主人の背後に憑き、修行を積むことになるな。そして…」
「そして?」
「主人を無事寿命まで生かせなかったら、消える」
「消えるってなんですか…?もう死んでるのに?」
「お前、相当な無神経だな…」
守護霊は大きくため息をつき、再び話し始めた。
「つまりは、輪廻転生の道から外れ、存在できなくなるということだ」
「はぁ、なるほど…」
正直分かったような分からないような状態だったが、口ごたえするとまた怒られかねないので、私はとりあえず納得したことにした。
「ところで、"守護霊さん"じゃ呼びづらいので、名前を教えてもらえませんか?」
「十兵衛、古坂 十兵衛だ。お前と姓は同じで親族ではあるが、関係で言うならばかなり遠いな。ほとんど他人だ」
「ほとんど他人…ですか、守護霊ってなんだかいい加減な感じで決まるんですね」
「お前…その嫌味な根性、叩き直してくれるわ」
十兵衛は両手の拳で風を切り、次の瞬間私の目の前に火花が飛んだ。




