これは吉報?
ここは平日の朝の電車の中。
私、古坂 華はスマホを見ながらうとうとしていた。
それというのも、昨晩は歩道橋の上で放り投げられた後、初めて守護霊というものを見て、眠るどころではなかった。
自分でもとんでもない状況の自覚はあったが、頭の中で順を追って整理をしていた。
まず、私の守護霊を名乗る古坂 十兵衛は、私とかなり遠縁の親戚であり、昭和初期に亡くなった人物らしい。
そもそも守護霊というのは基本的に血縁の者がなるそうで、十兵衛も例に漏れずそういうことらしい。
そして、十兵衛はとんでもない美男子であるが、本人曰く生まれ持ったもの以上に、努力の部分が多かったとのことだった。
十兵衛は「十」という字が名前に付いているが、十番目ではなく七番目の生まれらしい。
上から六人が全員女性だったため、時代背景もあり、待望の男子だったようで、厳しく育てられたとのことだった。
それだけではなく、美しい容姿に六人の姉……外見を磨くことに、口うるさく姉たちが関わってくることは想像に難くない。
それ故に、十兵衛は昔の人物ではあるが、生前の最新の美容法に留まらず、
私に守護霊として憑いてからの、美容法の取り入れ方には執着めいたものを感じる。
そんなことを考えながらスマホをいじっていると、久しぶりに親以外からメッセージが届いた。
『久しぶり〜!中学の同級生の真理だけど、今度結婚することになったんだ!急で申し訳ないけど、日曜が式なんだ。連絡が遅くなって申し訳ないけど、よかったら来てくれないかな?』
中学といえば、つまり地元の知人だ。
ただ正直、地元にはあまりいい思い出がない。
いつも通り欠席の連絡をしようとしたところ、十兵衛が私に向かって大声で叫んできた。
「たわけっ!!せっかくの誘いを断るんじゃない!!そんなもの、行くに決まっているだろう!」
私は他の乗客に聞こえないように、小声で返事をする。
「だ、だって地元にはいい思い出が…」
「だからといって、いつもと同じ生活を送り続けて何か変わるのか?これまで何かいい変化があったか?」
確かにそう言われてみれば、ぼっちになったら怖い、という理由だけでこういった誘いは悉く断ってきたが、私の同級生といえば39歳だ。
もうこういった誘いは無いかもしれない。
「……分かった。行くよ!!」
私は小声で十兵衛に返事をして、十兵衛は満足げに頷いたのであった。




