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第15話 日光例幣使街道を下今市へ

 普段よりも遅い時間に、葉加瀬太郎の曲を聞きながら、日光例幣使街道を北へ向かう。


 鉛色の空から降りしきる雪は強さを増す。


 安物ではあるが、スタッドレスタイヤを履いているので、そんなに飛ばさなければ大丈夫だが、ノーマルタイヤで走っているバカな奴が事故っているのを時折見かけ、いつもよりスローペースだ。


 積雪は2cmだろうか。


 栃木の町を抜けると、今も蔵が残る街道沿いの家の合間から東武線の線路が見え、20400系の普通列車が走っている姿が見えた。


 一瞬、国道293号を走った後、また、日光例幣使街道に入る。

 雪は変わらず降り続く。

 雨雲レーダーを見ると、ちょうど日光例幣使街道の直上を雪雲が通過中らしい。また、東武日光線や鬼怒川線の沿線も雪が降っており、ライブカメラで見る神橋や東武日光駅前は雪景色だった。しかし、この雪は午後になると止むらしい。


 鹿沼市を抜けると、日光例幣使街道に残る杉並木に入る。

 その瞬間、私はヴェートーベンの歓喜の歌(第九)を流し始めた。

 それも、小澤征爾が指揮者で、長野オリンピック開会式の時に演奏された物。


 演奏時間17分15秒。


 この演奏時間が終わるタイミングで、日光例幣使街道の杉並木の中を抜けて日光の町が見えて来るのだ。


 杉の木から時折、積もった雪が滝のように落ちて来るが、木々の合間から太陽の光も入り込んできており、木から落ちた雪がまるで光のカーテンのように見える。

 そして、第九の演奏時間17分15秒が経ち、第九の演奏が終わると、日光例幣使街道の杉並木を抜けて、今市バイパスに入った。晴れていれば前方に日光連山が見えるが、今日は見えなかった。


 少々押し気味なので、バイパスのガソリンスタンドで燃料を1000円分だけ入れてすぐに下今市駅に向かい、駅前のスーパーで昼食の買い出しをすると、手紙に同封されていた切符を見せて改札を抜けて、下今市機関区へ向かった。


 跨線橋を歩いて、まずはSL展示館に行くと顔見知りのアテンダントのお姉さんに挨拶をする。もし、ルナとアイルが居るならば、何か言われているかもしれないと思ったが、桜沢と言うアテンダントのお姉さんは何も言わず、いつもと変わらず、他愛ない挨拶をしただけだった。


「ピッ!」と、小さな汽笛を鳴らして、DE10ディーゼル機関車が扇形車庫から出て来た。

「スペーシアクロスロード」の世界の下今市機関区は、扇形車庫はピット線が9線あるが、目の前にある扇形車庫はピットが3線。変わりない物だった。


(ルナとアイルは居ない。会えないだろうな。)


 私が落胆する傍らで、今日のSL大樹を牽引する蒸気機関車C11‐325号機が扇形車庫から出て来た。


 今日はBダイヤというダイヤでの運行で、下今市を昼前に出発して東武日光駅に向かうSL大樹ふたら71号。東武日光から下今市へ戻って下今市でスイッチバックして鬼怒川温泉に向かうSL大樹ふたら72号。そして、鬼怒川温泉から下今市に帰るSL大樹6号での運転で、「SL大樹ふたら」は撮影と並走を行い、最後のSL大樹6号に乗車予定だ。


 尚、今回はルナとアイルに会うことを想定して、今夜も泊れる装備を持って来ているが、会えないならばさっさと帰って、女の子のお店でも行って、今回の事は無かったことにして忘れてしまおうと思っている。


 機関区の操車を見物した後、私は下今市駅前の駐車場に停めたS660に向かうため、改札を抜けると、ちょうど今日乗務するアテンダントのお姉さんが詰所から出て来るのが見えた。


「あっ―」と、眼鏡を掛けた長身のアテンダントのお姉さん。つまりは「スペーシアクロスロード」の世界の石原が私に気付いたらしい。私は小さく手を振ると、一目散にS660のエンジンをかけて、撮影を予定しているポイントへ向かって出発した。



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