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まさかの人物に、わたしは思わず声を上げそうになってしまう。おばさんへの連絡、なかなかつかないんじゃなかったの!?
ちらり、とギリギリ、ビデオ通話に映らないような角度から高月くんのスマホ画面を見てみると、画面には女性が映っていた。顔はあまり高月くんに似ていないけれど、雰囲気は近いものがある。全く血のつながりを感じない、というほどではない。
スーツを着ているらしい女性は、普通の、どこにでもいそうな人だった。すっきりとしていて、仕事ができそう、という印象がある。少なくとも、占い師とか、霊媒師とか、そう言ったものから連想させる、うさん臭さはないし、ついでに、家のインテリアがこんなにも異民族っぽいテイストでまとめられているようにも見えない。都会の、家賃がそこそこする築浅マンションでミニマリストとかしてそう。偏見だけど。
『生きてる? 無事?』
電話をかけてきて、中々ないような話の切り出し方だった。しかし、女性は、あの霊が家にやってきていたことを見透かしたかのように、高月くんに何かあったことが決定事項であるかのように、断言と言っても過言ではないほど、強く尋ねてきた。
「――僕は無事だけど。家はあまり無事じゃないかも」
『……次太郎が無事ならそれでいいよ。家なんていくらでも直せるから』
ほっとしたような息遣いが、電話の向こうから聞こえてくる。……あれ、もしかしなくても、わたし、一旦ここからいなくなった方がいいかな? 下手に電話しているところとか聞かない方がいいような……。でも、わたしがいるのに電話を取ったのは高月くんだしな。
「急にどうしたの?」
『私が作った御札が使われたみたいだったから』
……そういうのも分かるんだ。本当に霊能者ってやつなんだろうな。普通の人に見えるのに、ちゃんと力があるのか。
まあ、わたしを消そうとした幽霊も、絵に描いたような、黒髪ロングの湿っぽい細身の女性じゃなくて、利用者の多い駅とかで何回もすれ違うような、ごくごくどこにでもいるような女性だったし。その辺にいるような、特別感のない人に、実はもの凄い力が隠されているものなのかもしれない。
『……体調悪そうだね? 何かに当てられた? 熱は?』
「熱は、少し……。最後に測ったときは、三十八度ちょっとだった。何かの影響じゃなくて……た、ただの風邪」
高月くんが少したじろぐ。画面の中の女性は、まっすぐ、射貫くように高月くんを見ていた。
ちょっと怖いな、と思った、そのとき。
『――まだ、他にもいるね?』
その言い切った言葉に、わたしはぞくりと、鳥肌が立ったような気がした。




