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子供は虐待死で死んだ。
その子供はリビングにいて、ずっと扉をひっかいている。リビングの扉が開いていれば、時折でてきて、他の扉を開けている。シンク下の扉は開いていて……包丁が落ちていたこともある。
見た目は明らかに、がりがり。餓死が一目瞭然で分かる程。でも、お菓子に興味を持たない。そもそも何か分かっていないような雰囲気もあったけど、わたしが目の前で食べて見せて、食べていいといったのだから、少なくとも食べ物だと理解はしたはず。
今、分かっている子供の情報を並べても、いまいちこれだ! と思えるものがない。餓死したからお腹いっぱい食べたい、というのがあまりにも、そうかも! と思えるものだったというのが大きいからか、それ以上のことが思いつかない。
包丁が落ちていた、ということを考えると、殺意があるようにも感じるけど、でも、明確な敵意があれば、わたしはあの子の前にお菓子を並べようとしたとき、すぐにでも飛び掛かって襲われているはず。
わたしが追いつめられたのは、あくまでずっと誰かがいるような気配に耐えられなかったことだ。包丁、と言っても、朝起きたら顔のすぐそば、枕元に刺さっていて、なんてこともない。
そんなことされたら、逆にそれはそれで分かりやすかったんだけど……。
「んー……全然分からない。スマホ……、は、わたしのないか。高月くん、パソコン持ってたりは……」
「所持しておらぬ」
だよねぇ……。部屋を見る限りはなかったし。もしかしたら、ノートパソコンをどこかにしまってないかな、と思って聞いたけれど、案の定持ってないらしい。
「何を調べるのだ」
「あの子のこと。わたしはあの子供の幽霊のこと、あの子が幽霊になってからのことしか知らないから」
世間一般で虐待されてた子供が望んでいるものを与えたところで、あの子が満たされなきゃ意味がない。成仏するのはあの子なんだから。
わたしがそう説明すると「一理あるな」と高月くんがスマホをいじりだした。
今起きた事件ならば、テレビニュースで色々と情報を知ることができるかもしれないけど、十七年も前に起きた事件だ。言い方は悪いかもしれないが、『とっくに終わった事件』である。軽く調べた程度では、記録的な情報しか得られない。事件の加害者である母親や、被害者の子供がどういう子だったか、なんて情報はすぐに見つからなかった。
「未解決事件やオカルト的事件であればまとめ動画がよく作られているものだが……ああ、これはどうだ」
カチカチと、高月くんが音量ボリュームを上げながら、動画を再生した。




