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――とまあ、気持ちを新たにしたところで、急激に体調がよくなるわけでもなく。高月くんには大人しくベッドで寝てもらうことにした。病は気から、とはよく言うけれど、それはあくまで最後の一押しみたいなもので、即座に根本的解決ができるわけではない。
高月くんにリビングの惨状を伝え、掃除機とガムテープの場所を教えてもらい、片付けをしておく。段ボールはないらしいので、ゴミ袋をつぎはきのようにして処置しておいた。まあ、ないよりはマシ……だよね? 防犯的にはないにも等しいような気がするけど。
棚から落ちた雑貨類の正しい場所は分からないので、元気になった高月くんに片付けてもらうとして、一通り部屋をマシにしておく。
それが終わったところで、高月くんの部屋に戻る。高月くんはベッドに横たわってはいたものの、眠ってはいなかった。
わたしが高月くんのベッド横に腰を下ろすと、高月くんが上体を起こす。
「風邪、大丈夫? しんどくない?」
「ベッドにいられる分、いくらかは楽だ」
少し話をしたら、帰った方がいいかな。……あ、結局洗い物できてないから、帰る前に忘れないようにしないと。
「ええと……その、おばさん、っていつ帰ってくるのかな?」
夕方に帰宅するような仕事をしているなら、このまま彼のおばが帰ってくるまで傍にいた方がいいだろう。あ、いや、悪霊を祓う、とか言っていたし、霊媒師? 霊能者? みたいなことしてるのかな?
「知らぬ。伯母はいつでも気まぐれよ。夜明けと共に帰還することもあれば、太陽が高い昼間のときもある。一週間戻らぬことはざらで――……ここ一か月は、伯母を見ていない。連絡もろくに取れぬ人だ」
「なるほどぉ……」
だからコンビニとかで全部ご飯済ませてたし、風邪をひいても頼れないんだ。
しかも、一か月も帰ってこないことも珍しくなくて、連絡もまともにできないのなら、確かにあの御札をどうするか迷うのも納得だ。
わたしの両親が生きている間におばさんが帰ってきて、新しい御札を作ってもらえるかも分からない。
そりゃあ、どうするか迷うよ……。最強カードではあるけれど、頻繁に補充できるわけじゃないのだから。
「……それで、子供の霊についてだが」
「あ、えっと……。……、そのことについてなんだけど」
休まなくて大丈夫? と言おうと思ったけれど、高月くんの顔を見てやめた。今、彼にそう伝えるのは、逆に駄目な気がして。
代わりに、わたしは元々、今日学校へ行って彼に伝えようと思っていたことを話した。
たまたまお菓子を見つけたから、子供の霊にあげようとしたけれど、一切興味を持たなかったこと。もしかしたら、あの子の未練はお腹いっぱい食べたい、というのとは別のことなのかも、と思ったこと。
わたしの話を聞いた高月くんは、顎に手を持っていき、少し考え込み始めた。




