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「ごめん」と絞り出すように言う高月くんの声は、酷く震えていた。
「目の前で、志田が首を絞めらて消されそうになって、ようやく、間違ってたことに気が付いたんだ。もっと、ちゃんと断っていれば。違う、僕が見えないふりができていれば。志田は僕を諦めて別のところに行っただろうし、僕についてきて、あのコンビニに一緒に行って、下手にあの霊に目をつけられることもなかった」
「こんなことにならなくて済んだのに」と、高月くんは絞り出すように言った。
高月くんの後を勝手についていったのはわたしなのに。
助けてって、我がままを頼んだのは、わたしなのに。
高月くんは、こんなにも、真剣に、わたしのことを考えてくれていて。
――……あーあ、巻き込んだの、申し訳なくなってきちゃった。
でも――。
「やっぱり、僕には無理だったんだ。何も、できないままなんだよ」
――本当に、悪いって思うなら、こんなこと言って、落ち込む高月くんを放置するのは、許されないよね?
「無理って言ったら、本当に無理になっちゃうよ」
わたしがそう言うと、高月くんはようやく顔を上げる。体調不良と、泣きそうになったことで、彼の顔はぐちゃぐちゃだった。
「まだママとパパは死んでない。時間はあるよ。わたしは、ママとパパが生きていて、あの家から幽霊を追い出せればそれでいいんだもん。終わりよければすべてよし。……ね?」
……というか、そもそも、その切り札であろう御札を失った高月くんの方がちょっと心配なんだよな。おばさんがこうして身代わり人形や御札を渡していたってことは、それなりに危険な目にあうことを想定しているのだろうし。
それでも、その上でわたしのことを気遣ってくれるというのなら、わたしも全力を持って、望みを叶えて、高月くんに、やっとできた、って達成感を得てもらわないと、わりに合わない。
こんな身じゃ、ろくに恩返しもできないから。
……わたしが描いた漫画ノート一冊じゃ、流石に釣り合わないもんね?
「最期まで諦めない奴が勝つんだよ」
ちょっと茶化すように言えば、ようやく高月くんは、表情を柔らかくした。力が抜けたようだ。
「――貴様がそう言うのであれば、我も励むとしよう」
元気を取り戻したかのように、高月くんが言う。いつもの、中二病モードの高月くんだ強がりのようにも見えたけど。
でも、高月くんはこっちのほうが、ずっといいよ。
べしょべしょに落ち込んでいるより、ちょっと偉そうなくらいが、元気に見えるじゃん?




