53
「どうすれば無反応になれるか悩んでいたとき、逆に『見えている』ふりをいいんじゃないかって思いついたんだ。――中二病のキャラクターなんて、いかにも嘘っぽいでしょ」
確かに、中二病という設定を用いれば、たとえ反応してしまっても、『演技』ということになる。
……思い返してみれば、高月くんは、時折、何かにびっくりしたような表情を見せては、「くっ……奴らか!」みたいなことをしていた気がする。生前、学校でやっているところを見たことがあるような。あれ、本当に幽霊に対してビビッてたのか。
だいたいの人が中二病という設定に酔っているという風に信じれば、同じように、かつて人であった幽霊もそう考える。
本当が嘘になれる。
高月くんはそう思ったのだろう。
「志田はなぜかその設定を信じてたみたいだけど」
「……い、いや、信じてたっていうか……当てがないからとりあえず、って思ったって言うか……」
べ、別に本気で高月くんの中二病設定を信じ込んだわけじゃないから……! 霊能者なんて心当たりがないから、もしかしたら、って駄目元で声をかけてみただけだから……! さ、最初はそうだったもん!
「中に――」
「だから、僕はなにもできないよ」
わたしが言う前に、高月くんは、それを阻止するかのように、重ねて言った。
ある意味で、わたしの言葉を全て拒否するような言い方だ。わたしの言葉が怖いのかもしれない。どんな反応をするのかって。
「……高月くんはさ、どうしてそこまでわたしに協力してくれるの?」
純粋な疑問だった。
高月くんは、ただのクラスメイト。全く会話がなかったわけじゃないけど、仲がいいわけでもない。用事があれば声をかけるけど、雑談はしない。朝、教室に入るとき、仮に高月くんが近くにいても挨拶はしなかった。何か馬鹿やってたら、面白くてちょっと話しかけることはあったかもだけど。
友達とすらいえない関係だったのに。
今みたいに大変なことに巻き込まれて、言いたくないことを言わされて。頼んだわたしが言うか? って話だけど、彼に何のメリットもない。
「――……自分のため」
思っても見なかった答えに、わたしは数度、まばたきをした。いや、まあ、ここでわたしのためだとか言われても信用できないけど。
可哀想な元クラスメイトのため、くらいに言われると思ったのだ。好意的な感情というよりは、同情からの行動で、わたしが押し切ったから仕方なく、みたいなことを言われるかとばかり。
「今まで、幽霊が見えても、何もできなくて。それこそ、志田みたいに、家族を守って欲しいとか、誰かを助けたいとか、だから協力してほしいっていう奴もいたし、未練を解消して成仏したいっていう奴もいた。でも、僕は、それに対して、一度もうまくやれたことがなかったから」
高月くんは、少し上体を起こす。
「悪霊をやっつけることは僕にはできないんだって、小学生の頃に知って。いい幽霊のちょっとしたお願いもまともにできないんだって、中学生のときに、悟って。ずっと諦めたままだったけど――志田が、あまりにも必死で、本気だったから、高校生にもなったし、今回はできるかもって、思っちゃって」
でも、頭は下げ、うつむいたままで。




