表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日からここは事故物件  作者: ゴルゴンゾーラ三国


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/70

40

 わたしが見てるの、バレてる。

 カカカカッ、と、苛立ちを何度もアピールするかのように、小指から、人差し指にかけて、一本ずつ、時間差をつけて、わざと音を立てるよう。ドアガードを付けたままででもできる隙間から、扉の内側を、何度も、何度もひっかく。


 ――早くここを開けろ。


 言葉はないはずなのに、そう言われている気がした。

 開けられるわけがない。

 高月くんがあれだけ警戒していたのだ。あの子供の幽霊とだってわけがちがう。

 悪意があると、こちらを害するものだと、言われなくたって、わたしにも分かる。


 逃げたい、けど――。

 わたしはちらりと、高月くんの部屋がある方を見る。

 高月くんがここにいるのなら、逃げられない。あれだけ体調が悪そうだったのだ、彼を置いていったとして、高月くんがあれに対抗できるとは思えない。

 高月くんに相談しにいく? でも寝てたらどうしよう。いや、この状態なら起こす方がいいよね?


 ――ガンッ! ガ、ガカッ!


 どうするか迷っていると、再びドアガードを壊そうと、扉が激しく動かされる。が、一瞬、音の様子が変わって、わたしは思わずそちらを振り向く。

 壁側に取り付けられた部品が、ドアガードのアーム部分に少し引っ張られている。

 ドアガードが使い物にならなくなるのは、時間の問題だ。高月くんを起こしに行くよりも先に、扉をちゃんと閉め、鍵をかけた方がいいだろう。その方がまだ、時間を稼げると思う。


 わたしは玄関に忍び寄る。

 わたしが近づいたのが分かったのか、ぴたりと扉が動かなくなった。先ほどまであれほどうるさかったのに、今度はシーンという音が聞こえる錯覚がするほど静まり返った。

 わたしは、ゆっくりとドアノブに手を伸ばし――。


「ヒッ!」


 扉を閉じようと後ろにドアノブを引こうとした瞬間、扉の隙間から右手が出てきて、わたしの手首をつかむ。容赦なく爪が食い込む。


「い――ッ」


 わたしは慌ててドアノブを引く。でも、当然、女の霊の腕が挟まり、これ以上扉を閉めることはできない。

 わたしはパニックになりながら、何度も、何度もドアノブを引く。女が諦めて手をひっこめてくれることを願ったが、わたしが扉を閉めようとすればするほど、女の爪は、わたしの腕に刺さる。

 ついには、わたしの皮膚に女のオーバル型の爪が突き破った。痛いのに、血は出ない。しかし、女の爪が赤いからか、それが出血のように見えた。


 ぎちぎちと、扉が女の手に食い込む。ついには、扉に挟まった、女の腕の部分が折れた。

 一瞬、やっちゃった、と思ったものの、わたしの腕をつかむ女の力は緩まない。到底、生きた人間ができることではない。その力強さが、逆にわたしを奮い立たせる。


 もっと、と力を込めて扉を引けば、みちみちと、女の腕がひしゃげていく。骨の通った肉を無理やり押し切ろうとするような、気持ちの悪い感触が手に伝わる。くそ、幽霊のくせに。生きてないくせになんでこんな感覚はするのよ。


 ――バンッ!


 女の腕が切れ、勢いよく扉が閉まる。ぷらん、とわたしの腕にぶら下がる女の手。

 爪がわたしの腕に刺さって引っ掛かっているからか、床に落ちることはなかったけれど、数秒後、元からなかったように、物質ではなく気体だったかのように霧散した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ