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部屋の半分以上を片付けたところで、ようやく落ち着いたのか、母はわたしの部屋を後にした。結構夜遅くなっちゃったから、一旦休憩、という意味合いもあるのかもしれない。
半透明のゴミ袋の中につめられたわたしの私物は、もう必要がないもののはずなのに、こうしてゴミ袋に詰まっているのを見ると、さみしいものがある。
「……まあ、多少は、こんなもの持ってたっけ、みたいなのあるけど……」
部屋の中にあるものは、ちゃんと整理してあって、何がどこにあるか分かっているから、これはいつ買ったもの、何に使っていたもの、と分かる。
けれど、クローゼットの中に詰め込まれていたものは、勝手にクローゼットを触られないように、万一動かされたらすぐに分かるようにと、適当に物を詰め込んでいたから、入手時期が一切分からないものがちらほらあった。
というか、存在自体、覚えていないものもあって。
こんなもの買ってたのか、わたし……。
物が詰め込まれた、見慣れたクローゼットではなく、半分ほどすっきりしたクローゼットを見ていると、ふと、お菓子を詰め込んでいた箱があることに気が付いた。
そういえば、これも買ってたんだっけ……。
隙間を埋めるのに、丁度いいサイズ感の箱を百円ショップで見つけたから、買って置いたけど、空箱だと違和感があると思って適当にお菓子を購入して詰め込んだんだ。こんなものがあると知られることはないだろうと思いながらも、ただ空箱をしまうのではなく、お菓子を収納していれば、見つかったときの言い訳が立つ
一応、定期的に入れ替えていたから、流石に賞味期限は切れてないと思うけど……。
「……あ、これをあの子にあげればいいかな?」
こうやってクローゼットの中に置いてある、ということは、まだ母に中身を見られていないということだ。わたしが生前にしまった場所から移動していないから、他のものを取り出すために一旦どかした、ということもないから、中身を取り出しても、重さで気が付かれることはきっとないだろう。
台所にある食品は両親がちゃんと管理しているから、ちょっと減っただけでも気が付かれてしまうかもしれないが、これならきっと大丈夫のはず。
「……うん、試す価値はあるよね……」
両親は今、リビングで夕食を食べている。今のうちにこっそり取り出して、後で二人が寝た後にあの子の前に出せば……。お菓子を移動させるのも、母と父が寝た後の方がいいかもしれないけど、この後、母がまた片付けをしに来る可能性がある以上、今動くしかない。
わたしは音を立てないように、箱を開け、中身を取り出す。袋のお菓子は結構音がしそうで緊張するな……。でも、箱に入ったお菓子は、チョコレート菓子が一種類しかないし。
お菓子だけでお腹いっぱいになるのかも怪しいのに、一箱だけじゃ足りないだろう。
音が聞こえませんように、不審に思って両親がこちらに来ませんように、と祈りながら、わたしはちょっとずつお菓子をベッドの下に移動させたのだった。




