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高月くんは、右目を隠すように額に指先を当て、目を閉じてしまった。お、なんだ、邪眼がうずいてきたのかな?
「……、それ……いや、でも……あの……」
高月くんがめちゃくちゃ言葉を選んでいる。中二病っぽいセリフが出てこないなら、諦めて普通に話せばいいのに。
「――。きょ、今日。今日はどうやって外へと出たのだ」
「午前中に一回、パパが郵便物の確認のためにポスト見に行ったから。そのときに一緒に出たよ?」
休日、十一時くらいになると必ず父が郵便物を確認するため、エントランスにある集合ポストへと足を運ぶ。ついでに散歩を兼ねて、近所のスーパーへと食品の買い出しへと行く。
そのタイミングで外に出られると思ったから、今日は集合時間をお昼過ぎにしてもらったのだ。
「……、ふ、普段、学校へ行くときはどうしていたのだ」
「朝はパパと一緒に出るよ。帰りは、そのまま学校から図書館に行って勉強する決まりだから。ママが迎えに来てくれるの待ってるの」
「……合鍵、とかは……」
「ママかパパが開けてくれるのに、必要ある? 引っ越したときにパパからもらったけど、なくすと困るでしょってママに言われて預けたままだよ」
高月くんが頭を抱えてしまった。
「つまり……なんだ、貴様は自由に外へ出られないと」
「いや、別にママに頼めば外には出られるよ?」
わたしがそう言うと、高月くんは、ぐっと睨むように目を細めた。「それは……」と口を開いたが、何かを言葉にすることはなく、そのまま黙ってしまった。
そのまま、上体を起こすと、包帯をした左手の甲を撫でながら、「もういっそ、あの家を出て行ってもらったらどうだ」と投げやりに言う。……もしかして、面倒くさくなってきてる?
「幽霊じゃなくて、パパたちにってこと?」
わたしとしては、両親があの子に殺されないでいてくれればいいから、それも手段の一つかもしれないけど……。
「――……で、でも、パパが転職てそんなに時間経ってないしなぁ。お金、あるのかな。パパは幽霊とか一切信じてないし。ママはわたしの話を信じてくれなかったくらいだし、わたしがちょっとイタズラしたところで、気のせいで終わらせちゃいそうじゃない?」
父が非科学的なものを信じておらず、真面目に取り合ってくれないのは分かっていたから、母に少しだけ話をしたことはあるものの、「くだらないことを言って……」と顔をしかめられたので、ちょっとした騒ぎで気味が悪いから引っ越そう、となってくれるのがあまり想像できない。
「……ごめんね、色々協力してもらっているのに」
「いや……まぁ、血を分けた血族同士の方が、分かるものもあろう」
言いながら、高月くんがスマホをいじり始めた。飽きて会話を放棄したのかな、と思ったけれど、三鷺女児虐待死事件についての音声が流れてくる。そっとスマホを覗けば、今度はニュース動画を見て、事件を調べ、解決策がないか考えてくれているらしい。
……こういうところ、高月くんって真面目だよね。
ますますなんであんな、中二病っぽい変な演技をしているのかが気になる。
「――、……」
ふと、ニュース動画を見ていた高月くんの体がこわばった。




