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となると……。
「お腹一杯になれば、満足して成仏するのかな?」
わたしがそう言うと、高月くんはなぜか少し驚いたような表情でこちらを見てくる。
別にこのくらいの推理、誰にだってできるだろう。なんで驚くの、という意味を込めて「何?」と聞くと、高月くんは少し目線を泳がせた。
「いや……、無害な霊ならば捨て置くものかと――」
「なんで? わたし死んでるよ?」
思わず、高月くんが言葉を言い終わる前に、かぶせるようにして聞いてしまった。語気を強めたつもりはないが、言った内容が内容だからか、高月くんは気まずそうにしている。
高月くんがいつから幽霊が見えているのかは知らないけれど、生活の一部になるくらい見慣れているというのなら、害のない幽霊を放置しておくのは彼にとって当たり前のことなのかもしれない。
でも、わたしはあの家に幽霊がいるのは嫌なのだ。二人には、快適な家で暮らしてもらいたい。
「余計なものはさ、いない方がいいじゃん。……高月くんだって、害がないって分かっててもビビるものはビビるでしょ」
「ぼっ――わ、我は何も恐れるものなどない!」
めちゃくちゃ声裏返ってるじゃん。
「でも、お腹一杯かぁ……。中々難しそうじゃない?」
わたしはもう物を買うことはできないし、かといって盗むのも、ちょっと抵抗がある。もし仮に入手できたところで、家に持ち帰るのも難しいだろう。基本的に、誰かが出入りするタイミングで一緒に入っているから、そんなときに食べ物を持って家へ上がることはできない。隠せないし。
……いや、そうなると普通に盗むのも無理か? わたしが物を持ったら浮いているように見えるだろうし。ポルターガイストになってしまう。めちゃくちゃ目立ちそう。
「普通に鍵を使って開ければいいではないか」
わたしの説明に、高月くんは少し呆れたように言った。
「供物は我が用意してやる。玄関の前まで持っていってやるから、機を見て鍵を開け、取ればいい」
「……? でも、それってママやパパがいない間にやるんでしょ? じゃあ駄目だよ」
「物には触れるのだから、鍵を開けることくらいできるだろう。平日の昼間になってしまうだろうが……まあ、ここまで来てしまったら、一日くらい学校をさぼって協力してやろう」
……? なんだか会話が嚙み合わないな。
「だから、駄目だって。鍵はママやパパが開けるものなんだから」
わたしが高月くんにそう言うと、彼は信じられないものを見るような表情をした後、数度、まばたきをした。
……そんなに変なこと、言ったかな……? 家の扉は母親が開け閉めするもので、母がいなければ父に頼むって、普通のことじゃない?




