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よっぽど酷い顔をしてしまったのだろうか。高月くんが「まあ、悪さ、というよりは悪意がない、という方が正しいか」と、明らかに気を使っている風に言ってきた。
悪意。悪意がない。
確かに、あの子がしていることと言えば、物音を立てたり、声を上げたり、扉をあけたり。そんなものだ。
生きている頃。金縛りにあったり、首を絞められるような感覚に陥ったり。分かりやすく、死ぬような目にはあったことがない。
……実際は死んでるわけだけども。
「でも、ほら、人の形を保っているっていうなら、悪い感情があるもんじゃないの?」
「……そういう幽霊ばかりではない可能性だってある、という提言をしたのは貴様の方だろうが。それにそのまなこであの童をちゃんと写したか?」
「え?」
「下半身、ほとんどないようなものだっただろう」
――……、そう、だったか……?
高月くんに言われて、わたしは子供の姿を思い出してみる。
顔。目元の落ちくぼんだ、子供に見えないアンバランスな顔。腕もあった。母に手を伸ばして、いつもカリカリと扉をひっかいて。
突き飛ばしたとき、どうだった?
違和感を覚えなかったから、ちゃんと、足はあったと思う。あるはず。
本当に? それは人の足だった? 陰が、同じような形をしていただけじゃなくて?
突き飛ばしたときの、感覚の気持ち悪さに考えが引っ張られて、じっくり全身を見た?
見てたのは――母の方じゃなかった?
「――……」
「実害が出ているのであれば、悪しき者ではあるだろうが。だが、少なくとも、ただ未練がある程度であれば、我らでも対象法はあろう」
言葉を失ったわたしに、高月くんが言う。
「あっ、確かに! そ、そうだよね、何とかなるかもだよね!」
あの子供の霊のせいで死んだわたしとしては思うところがないわけじゃないけれど。あの幽霊の排除が難しいことではないと言うのであれば、それはそれで喜ばしいことだ。
わたしがなんとかできるなら、それに越したことはないんだから。たいした力がないと分かれば、今後家にいるときにそこまで神経質に怯えて警戒しなくてもいいということでもあるし。……いや、頭で分かってても、怖いものは怖いけど。危なくないだろうって思っている高月くんだってビビッてたし。
「さて。そもそも子供はどうして死んだのだ? そこから調べないと……」
「あっ、それは大丈夫! 分かってるよ」
スマホを取り出し、意気込む高月くんに、わたしは言う。肩透かしを食らったようにこちらを睨む高月くん。わたしは手を合わせ、謝罪ポーズをとった。
そう言えば、頼むだけ頼んで、具体的な事件の話はしてなかったや。




