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皮と骨だけしかないような子供の霊の目元は、深くくぼんで陰っていて、眼球があるのかどうかも怪しくて。そんな風な目をしているのに、なんだかこちらを恨めしそうに見ているように感じてしまうのは、わたしの思い込みだろうか。感情が読み取れるほど目元はハッキリしていないし、無表情なのに。
高月くんにもこの霊は見えているようで、彼はリビングの扉の方を見て、こわばったままだ。
「こっちの扉が娘の部屋で――、……高月くん?」
「あ、はいっ、すみません、今行きます」
不自然に固まっていた高月くんだけれど、父に呼ばれてパッと動き出す。父は少し不思議そうな表情を見せたけれど、何か変なものでもあったのか、なんて聞いてきたりはしない。初めて上がる他人の家に緊張しているとでも思ったに違いない。
わたしの部屋は、わたしが死んだあの日から、ほとんど変わっていない。多少はいじったのか、なんとなく違いはあるものの、わたしの私物を捨てたりだとか、逆に物置にするべく物を置いたりだとか、そういうことはしていないようだ。
ちら、と高月くんがわたしの方を見る。
「こっち。ここのクローゼット、開けて」
高月くんと父の間をすり抜けるように部屋の中に入り、クローゼットの前へと立つ。わたしが指をさして教えると、「……失礼します」と言って、高月くんはクローゼットを開ける。
クローゼットの中は、結構ごちゃついている。本や服、バッグなど。物が多いのもあるけれど、一見して『普段使っていない人間が触ったら崩れそう』という印象を受ける。
わたしがそう演出したクローゼットを、まさにそう思ったらしい高月くんがこちらを見る。
「わざとなんだって~! 部屋の中は片付いてるでしょ! ね!」
「…………」
高月くんは何も言わない。いや、父がいるから、わたしと普通に会話をするわけにはいかないというのも分かっているけど! でも、この高月くんの顔は、『クローゼットの中へ適当に物を詰め込んでいるから部屋が綺麗なんだろ』とでも言いたげである。
でも本当にわざとなの!
「ほら、これだけ物が多かったら下手にいじろうって思わないでしょ! 物を隠すなら物が多いほうがいいんだってば! これ、この衣装ケース!」
わたしは四段の衣装ケースを指さす。白いプラスチック製のもので、引き出しの前板にあたる部分だけがピンク色をしている、大手家具店で買った、安い衣装ケースだ。
「この一番下の引き出し全部引き抜いて、衣装ケースごと少し前に引き出して……、あ、それそれ!」
わたしに言われるがまま、高月くんが衣装ケースを動かす。四段目には古い教科書がつまっているから、重たいと思うけど頑張ってくれ。
衣装ケースの背面に引っ掛けていた書類ケースが、重力に従って落ちてくる。ちなみにこれは三段目の引き出しの裏側に引っ掛けていたものだ。なので三段目には、いらないものだけが詰められている。三段目を引き出したら、下に落ちちゃうかもしれないからね。
高月くんが書類ケースを持ち、こちらに視線を向ける。これだけか、と目線で確認を取ってくる彼に、わたしは「それだけ! ありがとう!」と胸の前で手を合わせ、礼を言う。
後はこれを処分できれば、と考えていたとき――。
「何をしているの!」
悲鳴にも似た、ヒステリックな母の声が聞こえてきた。




