表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日からここは事故物件  作者: ゴルゴンゾーラ三国


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/70

19

 ぞわぞわぞわ、と鳥肌が立ったような気がして、わたしは思わず二の腕をさすりながら、さらに数歩、高月くんモドキから距離を取る。

 わたしが高月くんモドキから離れても、彼はこっちを見つめ続けるだけで、動こうとはしない。


「早く行くぞ」


 高月くんは見慣れているのか、大した反応も見せず、歩き出してしまった。わたしは慌ててそれを追う。


「ね、ねえ、ねえ! アレ、何! さっきの、何!」


 歩くスピードを緩めない高月くんの後を、小走りでついて行く。走る速度を上げて彼の横に追いつけば、高月くんの顔はこわばっていた。全然見慣れている様子じゃない。彼の行動が早かったのは、ただ逃げたかっただけなのだろう。


 駅を出て、ようやく高月くんが足を止めた。ちらり、と後ろを見るが、あの高月くんモドキがわたしたちについてきた様子はない。幽霊の影がゆらゆらと、数人分あるものの、どれも薄く、先ほどのように濃い影は見当たらなかった。

 後ろを確認したのはわたしだけじゃないようで、息を思い切り吐いた声が聞こえてきた。


「ああいうの――」


 高月くんが口を開き、咳ばらいをする。再び、電話をかける振りをしながら、「あのような闇の者は、駅によく姿を現す」と、少し演技かかった声音で言った。


「以前、この駅で、自ら生を手放した者の末路なのだろう。共に運命を歩む共同体を探してやまないのだ、ああいった類の者は」


 この駅で自殺者が出た話は知らないけど……でも、わたしがここに引っ越してきたの最近だし、昔のことは知らな――……ん?


「えっ、もしかして、さっきのって、わたしを連れてこうとしたとか、そんな感じ、だったり……?」


「……それ以外に何がある」


 想像以上の答えに、思わず息を吸い込みそうになって、喉がひきつる。もう呼吸の必要がないからか、自発的に呼吸をしようとすると、どうにもつっかえてしまう。わたしは思わず、喉元を撫でた。


「あの、生きた人がああいうのに連れていかれたら死んじゃう、っていうのは分かるんだけど……。も、もし、幽霊が連れていかれたらどうなるの?」


「知らぬ。我は生者だ」


 それはそうかもだけど……。


「やめるか」


 高月くんは、再びわたしの目を見た。真剣な表情で。


「子供の姿をしていると分かる程度には、鮮明な形を保っているのだろう。ならば、先ほどの、一時的に人の形を持てる者よりも強者。敗北すれば、どうなるか分からない」


 逃げても構わない、やっぱりやめるってなっても、高月くんはきっと責めない。というか、彼にとってはそっちの方がいいのかもしれない。

 でも。


「やめない」


 わたしは即答していた。


「絶対、やめない。諦めない。二人を、あの子供に殺させたりしない」


 これだけは、絶対に譲れないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ