18
週末。三鷺駅へと向かうと、わたしは思わず顔をしかめた。
「うわ……」
人が多いが、黒い影の幽霊も多い。生きている人間と合わせるとまるで満員電車の中のようである。避ける隙間がない。人の量的に、丁度電車がホームに来て、その電車に乗っていた人たちが一気に駅を降りて、駅の構内が混雑しているのだろう。
この間、高月くんに話をしに行くために学校へ乗ったときには、ほとんどいなかったのに。幽霊にも、週末とかいう概念あるんだ……? いや、わたしが普通に、生前とあまり変わらない意識で生きているのだから、あるか。
……ていうか、これ、やっぱりわたしって生前生きているときに、幽霊とぶち当たって、わたしの体を幽霊がすり抜けていたっていう……。
「……考えるの、やめとこ」
黒いもやに接触するのも、知らない他人を通り抜けるのも、なんだか嫌だったので、わたしは駅の隅で人がはけるのを待つ。
少し経って、人が少なくなってきた頃。改札を出てすぐのところに、高月くんが立っているのを見つけた。
私服姿の高月くんは、黒一色の服だったけれど、思ったよりは普通の格好だった。学校にいるときは、もはや古典のような中二病キャラの格好をしている彼だから、私服も、もっとこう、チェーンとか十字架とかで凄いことになっているのかとばかり思っていた。
「こんにちは、高月くん。待たせたかな。……あれ、スケッチブックは?」
人と幽霊を避けて彼に近づき、声をかける。しかし、彼は手ぶらだった。あれだけ大きいスケッチブックだから、持っていれば一発で分かると思うんだけど。
「――……」
「……高月くん?」
彼はわたしの方を見る。見て、うっすらと、微笑んでいる。
いや、これは、微笑んでいるというよりは、口をあけ――。
「――志田」
背後から声をかけられ、わたしはパッと後ろを振り向く。そこには、左手でスケッチブックを抱え、右手でスマホを電話するかのように側面で掲げている高月くんがいた。
「そっちじゃない」
スケッチブックとスマホを持つ高月くんは真っすぐ、わたしの目を見て、言った。
わたしは思わず、先ほどまで、手ぶらの高月くんがいた場所を見る。
「ひ、っ」
一歩、後ずさる。足が、体が、勝手に動いた。
先ほどまで、手ぶらの高月くんがいたはずの場所には、高月くんと同じような体格の、黒い影が揺らめいている。
頭に当たる部分が、なんとなく、高月くんの輪郭を保ったまま。その影の高月くんは、うっすらと、微笑むように口を開け、こちらを見ていた。




