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昼休み。学校の、屋上へと続く階段でわたしと高月くんはそろって腰を下ろしていた。高月くんは購買で買ってきたパンとお弁当を食べている。わたしはもう物を食べることがないので、ちょっとうらやましい。ただ、美味しかった味を思い出して、いいな、と思うだけで、実際にお腹が空いているわけじゃないんだけど。
「というわけで、今度、友達って言って、うちに来てよ」
「……友、というが、用もないのに行くのは不自然ではないか? この間葬儀を終えたばかりだろう」
まあ、それは確かに……。高月くんがわたしの葬式に参加していないのならそこまで違和感はなかったかもしれないけど、普通にいたしなあ……。
「……あ、そうだ。美術室にわたしのスケッチブック置きっぱなしだから、それを持っていくっていくってのはどう? 学校側もわたしのスケッチブックとか置きっぱなしなの、困るでしょ」
父が忌引きの間に、わたしが学校に置きっぱなしだったものは担任の先生が家に持って来てくれていた。でも、美術室に置いていたスケッチブックは、その荷物の中になかったのだ。
「美術室……? なんだ、貴様、美術部に属していたのか?」
「……ううん、たまにこっそり絵を描かせてもらっていただけ。ママが部活に参加するのは禁止って言うから、昼休みに時々、ね。後は……あ、わたしの部屋の遺品整理とか。死んだ後のことを託されていた、とかでどう?」
必要とあれば、遺書みたいのを書くことはできる。物に触れるので。遺書としては捏造もいいところだけど、本人が書いているので、まあ、騙したことにはならないだろう。
「……まあ、それなら……おかしくはない、か?」
高月くんは考えこむようにしながら言う。
普通はこういうの、同性の友達がやるんだろうけど、わたし自身、自主的にやってくれるような女友達を作れていたわけじゃないから、高月くんだっておかしくはないだろう。部活もしていなくて、放課後も休日もなかなか一緒に遊びにいけないとなると、友達を作るのはなかなか難しい。
「今週末とか、お願いしてもいいかな」
父が休日出勤をすることは滅多にないし、母の様子からして、今週末は二人とも家にいることだろう。このタイミングなら、高月くんが家に行っても対応してくれるはず。
両親が家にいない間に家へとこっそり入ってもらうことも考えたけど、普通の人からしたらそれは不法侵入にしか見えないから駄目だ。死んだ人間から許可を貰った、なんて言ったって、警察が信じるわけもない。あと、普通に高月くんが学校をサボることになってしまうし。
「……はぁ、承知した」
嫌そうにため息を吐きながら、高月くんはそう言い、お弁当に入っていたポテトサラダを食べた。




