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わたしの通夜と葬式が終わって、数日。
父の忌引き休暇が終了し、今日から父は出勤しなければならない。表情は暗いままなものの、スーツに着替え、出社準備をする様子はあまりいつもと変わらない。
父はこのまま、わたしを忘れずに悲しんだとしても、前を向いて行けるのだろう。
問題は母の方。小さな物音にも怯え、常にわたしの部屋にいて、誰かが来ないか警戒している。子供の幽霊が発する音や、扉を開ける行為に気が付いている様子はないけれど、もはやそれ自体が問題ではないような気がした。
「――ほら、お前も行くぞ」
出社準備を終えた父が、わたしの部屋にいる母に声をかける。母は、わたしの部屋の入口近くにある、カラーボックスの前に立っていた。多分、上に飾っていた、倒れたままのぬいぐるみや雑貨を眺めている。
母のパートはまだ休みを取り続けている。というか、新しくシフトを入れてもらっていないようで、立ち直れるまではずっと休みのようだ。
しかし、この状態の母を一人にしておくのは父も気が引けるらしく、父が出社している時間はここから割と近くにある母の実家へと送ることになっていた。
父は少し迷ったように、呆然と立つ母を見ている。
「……なあ、行きたくないのは分かるが、もう時間がないから」
「嫌! 嫌よ、私はここにいるの!」
それでも、時間は待ってくれない。嫌がる母を強引に父は連れ出した。わたしも、二人が家を出る隙間を狙って、外へと出る。二人がこの家にいないのなら外にいても大丈夫だし、このタイミングでないと、わたしは外に出られない。
外に出て、周囲を見渡すが、コンビニからついてきたのであろう幽霊は見当たらない。まあ朝だしな……と思ったけれど、わたしは普通に出歩けているので、幽霊に昼夜は関係ないのかも。今ここにいないのをラッキーと思って、気を付けないと。
車に乗り込む両親を見てから、わたしはわたしで学校へと向かう。
「……あっ」
わたしは慌ててアパートへの駐車場へと戻る。わたしも車に乗って、二人がそれぞれ目的地に無事つけるか見ればよかった。
しかし、今更引き返しても遅い。駐車場にはすでに車はなかった。
……ま、まあ、車の乗り降り、大変そうだし……。後部座席に乗ったところで、車が止まったら後部座席から前に移動して、二人が降りるタイミングに合わせて、っていうのもかなり難しそうだ。
無事につくことを祈って、わたしは気持ちを切り替える。
ようやく高月くんと話ができる時間がやってきた。父の忌引き期間は、二人ともほとんど家にいたから、わたしだけ外に出るというのが難しかった。二人が家にいる間は、あの子供の幽霊が何かしてこないか見入っていたいし、出入りするのも大変だから。
「今からなら……昼休みには間に合うよね」
わたしは再び、学校へと向かって歩き出した。




