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異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第四章 二人の王女とお店経営
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内見

 いつものように作業場で仕事をしていると、小日向が隣で作業をしながら「そういえば」と話を切り出す。


 「前に言ってた内見ですけど、祖母にも話をしておきました。前もって言ってくれれば、いつでも大丈夫だと言ってます」


 「ありがとう。また相談して決めるよ」


 「なにか、お店を開くんですか?」


 こちらを伺うように聞いてくる小日向に、首を傾げながら答えを返す。


 「うーん、俺というよりルッカとフィオナだね。壊れたハードなんかを修理して、フリマアプリで売ってたんだよ」


 ルッカだけだと、さすがに見た目が子供のように小さいので違和感があるなと思い、フィオナの名前も付け足しておいた。


 「なるほど、店舗で売るんですね。そうなると古物商がいりますね」


 「そうなの?」


 俺はスマホで検索してみると、確かに必要であると書かれているページを見つけて慌ててしまった。


 「ど、どうしよう。古物商ってすぐ取れるのかな」


 「んーと、警察署で書類を出すだけっぽいですね。ただ、日数が掛かるみたいなので、それだけ注意ですね」


 俺はほっと胸を撫で下ろす。言ってくれて助かった。いざ店舗で販売して古物商がありませんでしたでは、笑い話にもならない。最悪、フィオナとルッカが捕まってしまっていたかもしれないと思うと、ゾッとする。


 「四十日くらいは審査に掛かるのか……」


 書類を揃えるのも大変だが、審査待ちの時間が長いのも辛いところだ。まあ仕方ないかと諦めるしかない。


 「まあ、また日取りが決まったら教えてください」

 「分かった、ありがとう」


 仕事が終わり家に帰ると、二人と内見の日取りについて相談する。二人ともいつでも問題はないとのことだったので、一週間後にしておいた。急すぎても迷惑が掛かるだろうし、申請をする時間のことを思えば、早いに越したことはない。フィオナやルッカ、そしてイーリンも楽しみで仕方がないらしく、終始どんな家かな、店は広いのかなと会話に花を咲かせていた。


 「おお、結構大きいね」


 小さい店と聞いた気がするのだが、周りの一軒家より一回り大きいくらいのサイズ感だ。店舗兼自宅であることを考えたら、これくらいの広さは普通なのだろうか。


 「どうも、いつも葵がお世話になっております。小日向千代です」


 人当たりの良さそうな千代さんと店内で挨拶を交わす。


 「こちらこそ、いつもお世話になってます。今回はこのようにいいお話まで頂いて、感謝しています」

 「フィオナと言います。本日はよろしくお願いします」

 「ルッカだぞ! よろしくなんだぞ!」


 フィオナは丁寧に頭を下げて挨拶をするが、ルッカはいつも通りだ。まあ見た目は子供のようだし、そこまで印象が悪くなることもない……よね?


 「元気で可愛らしい娘さんね」


 快活に笑う千代さんは背筋も真っ直ぐで、それなりにお年だとは聞いているが、全然それを感じさせない強さを感じる。


 「どうもすいません……ルッカ、もう少し王族らしい振る舞いをしなさい」


 後半は小声でルッカに注意する。王族らしい、というのは後で聞いたことなのだが、それ相応の言動をしなさいという意味であるらしい。別に偉そうにしろという意味ではない。一応。


 「構わないのよ。子供は元気が一番ですもの」


 笑顔でそう言って店内を見渡す千代さんに続いて、店内を眺める。建物自体は年季が入っていて所々傷んでいたりもするが、丁寧に掃除されているのだろう、目立つ汚れはなく綺麗にされている。建物は二階建てで、一階部分のほとんどは店内スペースになっていた。小さめのカウンターの上に年代物と思われるコーヒーミルやドリッパーが置いてあり、後ろの食器棚にはコーヒーカップから軽食用だろうか、皿が並んでいた。席数は二十ほどだろうか。


 「昔はたくさん人が来てくれて、賑わっていたけどね。今は大手のチェーン店が近くに出来たもんで、そっちに若い子は行くし、年寄り連中はみんな病気になったり亡くなったりしてねぇ。私もいつお迎えが来るのかと思うと、元気なうちに手放そうかと思ったのよ」


 悲しそうな声で昔を懐かしむように話す千代さんに、俺も少ししんみりとしてしまう。


 「まあ、悪いことばかりでもないさ。孫が成人するまで元気に生きてこれたし、心残りは葵の結婚を見届けられないことくらいかね」


 「まだまだ元気じゃないですか。きっと花嫁姿を見せてくれますよ」


 「そうだといいがねぇ」


 ふっと柔らかい笑顔を作って言う千代さんに、俺も笑いかける。小日向に相手がいるとは聞いてないが、愛嬌のある美人なのだから、きっと遠くないうちにいい人を見つけるだろうと俺は思う。


 「悪いね、無駄話に付き合わせて」

 「いえいえ」


 そこから、本格的に家の中を案内して貰う。一階に調理スペースと、少し狭いがダイニングがある。トイレが一階と二階にそれぞれあり、風呂場もそれなりに広い。二階に上がると、部屋が五つ。それぞれがそれなりの広さで、今の家の部屋と比べても一・五倍くらいは広い。


 「良いですね、とても広いです」


 「娘夫婦が泊まりに来てもいいように建てたからね」


 小日向の母親が千代さんの娘らしい。先程ダイニングで写真立てに飾られていた写真も見せてもらったが、とても幸せそうだった。


 「そういえば、庭もあるんですよね」


 「ああ、裏手の扉から出られるよ」


  一階に降りて裏手のドアを開けると、広々とした庭が視界に飛び込んできた。


 「これはまた、随分と広いですね」


 「元々、二世帯住宅にしようかって話だったんだけどね。娘の旦那の両親が事故で亡くなって、家を相続するというから結局その話もなくなってね。たまにバーベキューしたりするのに使ったり、ちょっと家庭菜園でもしてみようかと植えてみたりしてね」


 つまり、家一軒分建てられるスペースの庭だということだ。これにはフィオナが目を輝かせている。


 「素晴らしい庭ね。これだけ広ければ、色々育てられるわ!」


 「家庭菜園でもするのかい?」


 「ええ、そのつもりです」


 フィオナが頷く。それにルッカも言葉を続ける。


 「フィオナが作る野菜はみずみずしくて、とても美味しいんだ……です」


 先程注意されたのを思い出したのか、言葉遣いを直すルッカ。少しむず痒いような顔をしているように見えるのは、慣れていないからなのだろうか。


 「本当に、とても良い家です。ですが、本当にいいんですか? これからどちらに住まわれる予定なんですか?」


 「もう施設に入居できるようにはしてあるのよ。店が売れたら入るつもりで話は済んでますから」


 老後の世話をさせるつもりもないしね、と冗談っぽく笑う。


 「だから、出来るだけ早く売れたらいいなと思っていたのよ。建ぺい率の問題もあるから、建て直すと建物は少し小さくなるし、古いから一度解体するなら、その費用もそちらで持ってもらうことになりますから、お値段はお安くしておくわ。孫の知り合いならなおさらね」


 「大変ありがたいお話です」


 フィオナとルッカに向き直る。


 「どう? 俺は結構気に入ったし、購入するつもりではあるんだけど。二人も問題ない?」


 「ええ、とてもいい物件だわ。私はここに住みたいわ」


 「ルッカもなんだぞ!」


 二人にも好印象だったようなので、改めて値段の話に移ることにする。ルッカの言葉遣いが戻っていたことには、触れないことにしよう。


 話を詰めていくと、八百万でいいと言われて驚いた。同じ規模の家なら、一応下調べをした感じでは、この周辺だと二千六百万くらいにはなるだろうか。それが八百万。


 「そんなにお安くていいのでしょうか……?」


 少し不安に思いそう聞くが、千代さんはあっけらかんとした感じで手を振る。


 「いいのよ、使ってちょうだい。葵が相続するならそっちに譲るつもりだったけれど、そのつもりもないようだしね」


 結局、お言葉に甘えて、八百万で買い取ることにした。後日、不動産屋を挟んで取り引きをするという話になり、今日のところは帰ることにした。


 「いい人だったね」


 帰り道、三人で喋りながら歩く。家が予想より広かったために、二人とも大興奮だ。


 「そうね、あんなにいい家を安く売ってくださるなんてね」


 「引っ越しが楽しみなんだぞ!」


 これからに期待しつつ、俺たちは明るい未来を想像しながら帰路についた。

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