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異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第三章 二人の王女と異世界探検
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幕間 恋愛ゲーム④

二人で学校を出る。何か喋ろうと思いつつも、言葉が出てこない。フィオナも特に何か喋るわけではなく、ただ静かに隣を歩く。この静かな沈黙が、恥ずかしいやら何やらでますます喋りづらくなるのだが、不思議と苦痛には感じなかった。


 「今日は、ルッカはいいの?」


 唐突な問いに、俺は少し考えてから答える。


 「転校してきたばかりだし、困ったことがあればみんな助けてくれるよ。みんな親切だから。それに、フィオナとの時間も大切にしようって思ったんだ」


 「そうなの? 嬉しいわ」


 微笑むフィオナの顔を見て、この選択は正しかったんだと嬉しく思う。問題は、明日俺がルッカを傷つけたとか言われないかだが……そういえば、頭の中に選択肢はなかったなと思い出す。フィオナと二人で下校することを選択したのは、選択肢を選んだからではなく、自分の意思だ。


 「どうしたの? 何か考え事?」


 少し考え込んでしまったのか、頬を膨らませたフィオナが顔を覗き込んでいた。


 「あ、ごめん。ちょっとね」


 「まさか、私と二人なのに他の女のことを考えてたわけではないわよね?」


 まるで彼女のような口ぶりだが、どのみち女の子と二人の時に別の女の子のことを考えるのは失礼だよな、と俺は思考を切り替える。


 「そういうわけではないけどね、俺たち以外にも友達が出来たらいいなと思っただけだよ」


 「もー、考えてるじゃない」


 腕を組んでさらに膨れる頬を、指でつつく。


 「はは、リスみたい。悪かったよ」


 「本当に反省してるのかしら?」


 「してる、ごめんね」


 「なら、いいわ」


 何とかお許しをもらえて、二人はコンビニにたどり着く。店内に入り、アイスの入った冷凍ケースを二人で眺める。


 「どれにする?」


 「そうねぇ。悩んでしまうわね」


 色々な種類のアイスに目移りしながら悩むフィオナに、俺はいくつかのアイスを指さして勧める。


 「これとか美味しそうだよ。こっちもいいね」


 「んー、そうねぇ……これにしようかしら」


 フィオナが選んだのは、半分に割れる棒アイス。


 「じゃあ俺はこれにしようかな」


 餅のように柔らかい二つ入りのアイスを選ぶ。会計を済ませてコンビニを出ると、公園に向かって歩く。


 「そこの公園で食べようか」


 「ええ、そうね」


 公園では子供たちが遊んでいて、滑り台やブランコは賑わっている。俺とフィオナはベンチに座り、袋からアイスを取り出す。


 「はい、フィオナ」


 棒アイスを手渡し、俺は自分のアイスの包装を剥がす。


 食べようかと付属のプラフォークを刺した時、口元に冷たい感触がして驚いてフィオナの方を見ると、半分に折ったアイスを俺の口に当てているフィオナの姿があった。


 「ふふ、ビックリした? どうせだし半分こしましょ」


 「そうだね、俺のも二個あるし、一緒に半分こ――」


 喋っていると、開いた口の中へアイスを突っ込まれた。


 「ふごっ」


 「あーん、なんてね」


 冗談のように言うフィオナの耳が真っ赤だ。俺もすごく恥ずかしい。


 俺は一つ、フォークでアイスを刺してフィオナの口元へやる。


 「お返し。あーん」


 「ち、ちょっとそれは……」


 「自分はしたのに、されるのは恥ずかしい? お互い様だし、諦めてほら」


 俺自身恥ずかしい。だが、ここで引いたら負けな気がして、俺はフィオナの口の中にアイスを入れる。


 「ん、冷たい……美味しい」


 二人して照れていると、周囲の子供たちが集まってきていたことに気付いた。


 「二人は付き合ってるのー?」

 「らぶらぶだー!」


 「べ、べつにそういうわけじゃ……」


 「キスしないの? キス!」

 「してるとこ見てみたい!」


 子供たちの無邪気な好奇心に、俺たちは互いの顔を見つめ合う。至近距離で正面から見たフィオナの顔は、とても綺麗で、美しく潤いのある唇が……


 「……しいわ」


 「え?」


 「顔がいやらしいわ!」


 「え、嘘!?」


 「やらしー!」


 子供たちにまでいやらしいと言われ、俺はフィオナの手を引いて公園から逃げるように出た。


 「ちょっと、どこにいくのよ」


 公園から出たところで、俺は冷静になる。これからどこへ……


『今日は別れて帰る』

『一緒に家に帰る』


 また選択肢だ。これを選べば、二人には伝わってしまうのだろう。この流れで家へ連れていくのは、さすがに言い逃れが出来ない気がする……それでも……


 「一緒に家に来ない?」


 「えっ……」


 どうやら、伝わったらしい。顔まで真っ赤に染まったフィオナが少し考え、こくんと頷いた。


 「おじゃまするわ」


 「椅子に座って待ってて」


 お茶を二人分入れて机に並べると、正面に座る。


 「その、何か話があったりとかするのかしら」


 少し挙動不審気味なフィオナを見て、俺はどうしたんだろうと一瞬考えたが、家に呼んだのだ。何かあるだろうと思われても仕方がないかもしれない。


 「もう少し一緒にいたいなって思ったんだ。ダメかな」


 「だ、ダメだなんてそんなことないわ! 私も嬉しい」


 二人して照れていると、なかなか会話が進まない。


 「ただね、やっぱり家に呼ばれたからには、その……凪も男の子だし、そういう話とか、あるのかなって思っちゃったのよ」


 小さめな声は少し震えていて、俺は心臓が大きく鼓動するのを感じていた。


『告白する』

『今はしない』


 まるで恋愛ゲームだな、と思うような選択肢。俺はフィオナを見る。さっきの発言も相当勇気を出して言ったのか、少し震えているように感じる。そこまで言わせたのなら、男として決めなくてはいけないような気がした。


 「俺はフィオナのことが好きだよ」


 「えっ……」


 驚いた顔をするフィオナだが、俺の選択を感じたのか、涙を流しながら満面の笑みに変わった。


 「私も……私も好きよ!」


 「フィオナ……」


 俺は椅子から立ち上がり、フィオナに近づく。


『キスをする』

『抱きしめる』


 この選択肢はどっちが正解なのだろう。いきなりキスは早すぎるだろうか。だが、キスをしたいという欲望がとめどなく溢れてくる。目の前で、俺の選択を待っているかのようなフィオナの目を見て、思わず俺は自分の心に忠実に選択肢を選んだ。


 ゆっくりと唇をフィオナに近付ける。一瞬びくんと震えたフィオナが、目を閉じて……。


 そこから後はもう止まれなかった。何度もキスをして、気付けば寝室。俺とフィオナは布団に潜り込み、キスをして。


 「凪……優しくして」


 フィオナの指が、俺のシャツを掴んで……


 「そこまでじゃ」


 暗転。唐突に、世界が終わった。


 「あれ、ここは?」


 さっきまで、布団の中にいて。隣にはフィオナがいたはずだが、目の前にはフィオナとルッカ、イーリン、そしてカルミラ先生がいる。真っ暗な空間で、人以外には何もない。


 「ここはまぁ空きメモリじゃな。ゲームの容量が余ったんで、その分のスペースじゃ」


 「ゲーム……」


 頭の中が混乱する。ゲーム? 一体……。


 「ああっ!?」


 思い出した。俺たちは、ルッカの作ったゲームの中にいたのだ。それを何故か忘れて、フィオナと……。


 「わ、私なんてはしたないことを……」


 フィオナは真っ赤な顔を手で覆っている。


 「途中からよく分からなかったんだぞ。凪とフィオナは楽しかったんだぞ?」


 ニマニマしながら聞いてくる。とてもではないが答えられない。俺の選択は伝わっているはずだ。恥ずかしすぎる。


『全然出番なかった!』


 最初に出てきて以降は、イーリンの出番はなかったな。あまりイーリンは楽しめなかったみたいだ。


 「このゲームは全年齢向けじゃ。焚き付けたとはいえ、飛ばしすぎじゃ」


 「す、すいません……」


 返す言葉もない。


 「記憶を一時的に封じることで、新鮮な気持ちで楽しめたじゃろう? わしがちと手を加えての」


 「犯人はお前か!」


 「少し手伝って貰っただけなのに、いつの間にかなんだぞ」


 「あまりカルミラを信用し過ぎちゃダメだよ……」


 悪いやつではないのだが、悪い意味でも信用があるのだ。


 「私もうお嫁にいけないわ」


 脳裏にフィオナとキスをした記憶が蘇る。いい匂いがして、柔らかい……。


 「凪の顔が緩んでるんだぞ」


 「ちょっと、忘れなさい! あれは事故よ!」


 フィオナも思い出したのか、目が怖い。俺はすっと視線を逸らした。


 「そういえば、何かを忘れているような……」


 「忘れてる? もう全て思い出したじゃろ?」


 「何かあったかしら」


 「分からないんだぞ」


『何かあった?』


 みんなで頭を捻っていると、唐突に頭に衝撃が走った。


 「思い出した、ゼラだ!」


 「「あ!?」」


『ゼラって?』


 「ほ? ゼラ?」


 その場にいなかったイーリンとカルミラ以外は思い出したようだ。ダンボールに入れられて捨てられていた、スライムのゼラのことを……

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