子供の秘密基地
子供の秘密基地
「それじゃあサクサクいくわよ」
フィオナの手番、サイコロを振る。出目は『5』。森の中に風景が変わる。そこには、森に不釣り合いな石造りの建物が鎮座していた。
「ここは昔に使われていた遺跡ね。戦争時にシェルター代わりに使われたり、今でも子供たちが集まって秘密基地にして遊んだりしているのよね。私も参加したかったのだけれど、さすがに立場を考えると、ね」
「楽しいそうだね、俺も昔、森の中に小さな小屋があってさ。友達とそこで秘密基地だっていっておもちゃを持ち込んだりしてたよ」
「子供たちが秘密基地にしている場所、グラン王国領にもあるんだぞ。ルッカは一緒に遊んだんだぞ」
少し自慢げなのは何なのだろうか。まぁルッカなら王族だろうが関係なく混じってそうだとは思う。
「わしらは根城を飾り立てたりはするが、集まって何かしたりはせんのう。1匹狼の集まりじゃからな」
「確かに、吸血鬼ってあんまり集団でいるイメージないよね」
位が高いというか、プライドが高いというか。そういうイメージが強い。
『チャレンジマス!』
『子供たちと勝負をして勝て!』
「勝負って言っても、何するのかしら……」
フィオナが首を傾げていると、建物の中に子供のエルフたちが走って入ってきた。何かを持っている様子もないが、身一つで出来る遊びなのだろうか。
「お姉ちゃん、やってみるから真似してみて!」
男の子だろうか、斜めに揃えられた少し短めの髪の毛の子供がそう言って、指先から光る緑色の糸を出した。
「ああ、魔糸繰りね。私、結構得意よ?」
そう言ってフィオナも同じように指先から光る緑色の糸を出した。子供はそれを見て、更に複数の指から糸を出すと、もう片方の手で編むように糸を絡ませていく。
「出来た!イノシシ!」
綺麗な緑色で縁取られた、イノシシのフォルムに中まで糸でしっかり作り込まれている。ちゃんとイノシシに見えるのだから凄い。
「凄いね、器用なんだね」
画面を見ながら感心していると、何やらルッカも挑戦しているのか、指先から土気色の糸がちょろ……と出ている。だが、少し出しては直ぐに消え、出しては消えを繰り返している。難しいらしい。
「全然出来ないぞ」
「それはそうじゃろ。魔法に長けたあやつらエルフじゃから可能な事じゃ。あの糸は指先から放出しておる魔力なのじゃが、そもそも目に見えるくらい魔力を出そうとするだけでそれなりの負担じゃし、編み込むなんて器用な真似は他の種族では真似出来ん」
「遊びひとつで凄いんだね」
それから、交互に技を繰り出しているらしい。色々な形を編んでいく。どうやら点数があるらしく、使用している糸全体の長さ、強度、見た目の美しさで競うらしい。
「ふ、これでトドメよ!ご覧なさい!インフェルノドラゴンよ!」
そう言ってお披露目されたその作品は、フィオナと同じサイズくらいの、かなりしっかり作り込まれたドラゴンだった。頭から角が生えており、牙は鋭い。大きな羽で羽ばたくように翼を広げたそれは、とても糸を編んでいるとは思えない完成度たった。
「す、すげー!」
「お姉ちゃんかっこい!」
「そ、そうかしら。おほほ」
子供に褒められるという、新たな経験をしたらしいフィオナは照れくさそうに頬をかいた。
『CLEAR!』
『子供たちに威厳を示した!子供に尊敬される大人に1歩近付いた!プラス5万R!』
「子供に尊敬される大人か……そうなりたいものだけどね」
「凪ならきっとなれるわよ。難しく考える必要なんて無いわ」
「そうじゃの、そのままのお主であれば、遠からずそうなれるであろうよ」
「そうかな……ありがとう」
自分に自信がある訳ではないのだが、掛けられる暖かい言葉を噛み締めて、俺はそうなれるよう努力しようと思えた。
「次はルッカだぞ!」
ルッカがサイコロを振る。出目は『3、』。風景が変わると、そこは木々の開けた丘のような空間だった。
「風が気持ちいいんだぞ」前髪が風に流されて、さらりと吹き抜ける。ひんやりとした風が、ルッカの頬をそっと撫で
た。
「ここは私もよく来た場所ね。風が気持ちよくて、少しでも精霊の気配が感じられたらいいなって。ずっと祈りながらこの場所へ来ていた」
「えーと、フィオナは王族だから精霊魔法が使えるんだよね?でも精霊は見えないの?」
俺の言葉に、3人が固まった。何か聞いてはいけない事を聞いてしまったのだろうか?
「えーと、そのじゃな。そ奴は魔法は抜群に鍛えておるのじゃが。精霊魔法となると、まだ未習得じゃ」
「精霊魔法って、普通の魔法とは違うの?」
「全然ちがうわ。魔法というのは、事象に干渉して起こす、現象なの。精霊魔法は、精霊にこうしてください、ってお願いするの。それだけで精霊魔法は発動するわ。効果はその時の精霊の気分で変わったりもするけどね」
なるほど、お願いするだけだから難しい事はない代わりに、精霊さん次第になる、と。
『イベントマス!』
『心地よい風につい、ウトウトして眠ってしまった!次のターンお休み!』
「もう絶対勝てないぞ!」
これはルッカは優勝争いからは脱落かな。分からないけど。
「確かに、心地よい風ですわね」
マグノリアが珍しく真面目そうな顔で地面に腰を下ろす。
「座っていいんだぞ?マグノリアの事だから、『地面なんて汚い場所に座るなど有り得ませんわ!』とか言うのかと思ってたんだぞ」
同じ事を思ってた。というか、全員思ったんじゃないかなぁ。
「それはそれ、これはこれですわ。こんなに気持ちいい風を感じるのですもの、少し横になるくらいどうって事……虫ですわ!毛の生えたウネウネした足のいっぱいある虫がいますわ!?」
目の前に虫を見つけて大騒ぎするマグノリア。
「わたくしを誰だと思ってますの!?こんな虫ケラ!」
足を振り上げて、ガッと虫に向かって振り下ろした!
「い、いたい!」
「「「!?」」」
なんと、虫が喋った。フィオナ以外、全員が目を丸くして驚いている。
「何してくれてんねん!わて何か悪いことしたんか?ん?」
そこから少し、時間が凍ったかのように誰も言葉を発する事が出来なった。
「ちょっと、聞いとんのか?わての事無視せんといてくれます?」




