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異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第三章 二人の王女と異世界探検
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天繭様

「で、話聞く気になったんかいな」


ようやく衝撃から立ち直ったルッカが、少しだけ頭を下げる。


「ごめんなさいなんだぞ、悪気は無かったはずだぞ。ほら、謝るんだぞ!」


「どうしてわたくしが頭を下げないといけないんですの!?わたくしは王女なのよ?驚かせたそこの虫ケラが悪いに決まっていますわ!」


あちゃーとルッカが額を押さえる。今までの流れからして、きっと何かしらのペナルティが発生するのだろうな、と俺は少しルッカを気の毒に思う。


「あんなぁ、人間の王族は他人や他の種族の事なんかどうでもええんか?そうやって気に入らへんかったら殺そうとするんか?一番野蛮な種族は人間とちゃうんか?ええ?」


結構辛辣だなぁ、正論っぽいけど。と俺が思っていると、フィオナが小刻みに震えていることに気が付いた。


「どうしたの、フィオナ。大丈夫?」


「だ、大丈夫じゃないわ……あの虫……じゃなくて、あの方はこの森の守り神と言われている存在よ」


毛虫が守り神?いや異世界だしそういう事もあるのかな、としげしげ考える。


「あの方の正式な名前は天繭てんけんアルケ=ヴァルミリオン・クリュサリス。私たちは天繭様と呼んでいるわ。ちなみに、森に守りの結界を施しているお方でもあるわ」


見た目に反してとんでもない名前が付いていた。とてもではないが覚えられる気がしない。マグノリアの放った火の魔法を防いだのも、この天繭様のようだ。


フィオナはその場に膝をついて、手を合わせる。画面越しであっても礼を欠くことのないようにしているのだろうと思い、俺も同じように膝をつく。


「あっちではちゃーんと礼を尽くしてくれてるっちゅうのに、あんさんらはどうしようもあらへんな!」


「え、こっちの事も分かるの?」


「天繭様は森のあちこちに居るわ。同じ見た目で、その一体一体が全て、天繭様なの」


「つまり、分体が沢山いるって事?」


「そうよ」


そう答えるフィオナの顔には、うっすらと汗が滲んでいた。想像より遥かに凄いお方だったようだ……とてもそうは見えないが。


「なんで関西弁なの?」


「さぁ……同じように喋る人や生き物は、私は知らないわ」


不思議だが、分からないものは考えても仕方がないなと諦めることにした。異世界で関西弁喋る人ってたまにいるよね……。


「ともかく、あんさんらは反省せなあかん!世の中そんなに甘くないで!」


そう言うと、天繭様から糸が吐き出された。一気に大量の糸に絡みつかれるマグノリアとルッカ。


「なんでルッカもなんだぞー!」


「やめなさい!解きなさいよこのクソ虫!」


二人はあっという間に糸にぐるぐる巻きにされ、蛹の繭のような塊になった。


「しばらくそのまま反省せい!」


ああ、可哀想なルッカ……。


「どれ、もう終わったかの?」


「カルミラ、どうしたの?」


そういえば、天繭様が現れたあたりからカルミラの姿が見えなくなっていた。


「わしはあ奴が苦手でのう……昔ぐるぐる巻きにされて以来、見かけたら逃げるようにしておる」


「ぐるぐる巻きにされるような事、したんじゃないの?」


「べ、別にわしはそんな事しとらんぞ?」


してそうな顔だなぁ、と俺は思ったが黙っておくことにしよう。聞いてもろくなことが無さそうだ。


「暗いぞー!狭いんだぞー!」


「こんな事してタダで済むと思わないでちょうだい、絶対燃やしてやるわ!」


泣きが入っているルッカと、いまだ喚き散らすマグノリア。ルッカには気の毒だが、しばらく繭の中に居てもらおう。多分どうにもならないし。


結局その後、二巡して再びルッカの手番が回ってくるまで、ルッカとマグノリアは繭の中だった。


それから少し進み、あと少しでゴールまで届くかどうかという所まで進んできた四人。資金的にも、ルッカ以外はゴールすれば優勝の目がある状況だ。


「ようやくここまで来たね……」


少し進めば資金が増減し、森の魔物と戦わされたりもした。フィオナやイーリンは順調に進み、ルッカはマグノリアの影響を受けて資金を減らしながらも進んできた。


ルッカ 残り10マス 資金マイナス5万

イーリン 残り5マス 資金44万

凪 残り8マス 資金32万

フィオナ 残り6マス 資金39万


手番はイーリン。このまま優勝してしまうのか。執事がサイコロを握り、運命のダイススロー!


出目は『4』。


ダンダン!と地面を叩いて悔しがるイーリン。だが、フィオナが6を出さない限りはイーリンの優勝となる為、まだ勝負は分からない。


『まだ、わからない』


「そうだね、まだまだ優勝はあるよ。なんならゴールしなくても、目標金額まで届く可能性もあるしね」


諦めない姿勢を見せるイーリンに、俺は応援の声をかける。イーリンはいい子だ。


「私の応援はしてくれないのかしら」


「もちろん応援してるよ、どっちが勝ってほしいとかじゃないけど、頑張って」


その声に、二人はやる気十分といった顔で頷いた。


イーリンの周囲の景色が変わると、そこはどこかの建物。白衣を着て忙しなく働くエルフたちが、縦横無尽に走り回っている。


「ここは?」


「聖王国魔法研究所よ。他国で生み出された魔法の使用権を魔法教会から買い取ったり、それを研究したり、自分たちで魔法を開発したり、既存の魔法の効率化を図ったりと色々しているわ」


「そういえば魔法教会が買い取って管理しているんだっけ」


以前に聞いた話を思い出す。新たな魔法は魔法教会が買い取り、魔法書という形で販売していると。


「ここでは魔法教会も兼ねているのよ。他国だと分かれていたりもするけれどね。魔法教会同士で買い取ったりしながら、全種族に魔法が広まっていくの」


「まぁ、しょうもない魔法も多いがの。一本の毛を綺麗に痛みもなく抜く魔法とか、最近だと酸っぱい果物を甘くする魔法だとかの」


まぁどこかで需要はあるんじゃないかな……多分……。

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