肉の盾、再び
「なんでルッカばっかり痛い目にあうんだぞ……?」
イジけるルッカに、かける言葉が見つからない。俺も一度死んだとはいえ、自分から崖に飛び込んだ為に特に痛みは感じなかった。途中で意識を失わなければ再起不能だった可能性が高いが。
『どんまい』
イーリンがホワイトボードを使って慰めている。ありがとうイーリン。
そこから再び、全員で来た道を戻る。途中でまたアイテムカードを補充したり使ったりしながら、はじまりの神殿を目指す。俺は回ってきた手番の時にアイテムカードを使用した。
『アイテムカード、徳政令札を使用しました!マイナス資金がゼロに戻ります!』
「よし、これでここから巻き返すぞ!」
「踏み倒しなんだぞ」
「こういうゲームでは定番だから!」
そんなやり取りをしながら、数巡かけてはじまりの神殿に向かった。相変わらずマグノリアが無茶苦茶するので、ルッカの資金がどんどん目減りしていった。
途中経過 現在地 セントラル中立区域
フィオナ 資金33万
凪 資金15万
イーリン 資金45万
ルッカ 資金12万
セントラル中立区域に全員が戻ってきた。ここからエルデリア聖王国の首都までは、一応リュクシア王国領側から回り込むルートがあるが、使うメリットはあまりないだろう。全員がまっすぐエルデリア聖王国方面へ向かうこととなった。
「もう絶望的だぞ〜……」
ルッカの悲痛な叫びが聞こえるが、俺も通った道だ。
「何か使えるアイテムがあればいいね」
「きっと逆転の道も探せばあるわ」
「まぁ絶望的であることに変わりはないがのぅ」
カルミラ以外がルッカに慰めの言葉をかけた。
『このまま優勝する!』
イーリンの圧倒的資金力の前に太刀打ちできるのだろうか。まぁやるだけやってみよう。ゴールまではおよそ19マス。資金的にも、これが最後になる可能性はある。
ルッカの手番、サイコロを転がす。出目は『4』。周囲の景色が森の中へと変わる。
「エルデリア聖王国領は基本的に森よ。見るべきところは特にないかもしれないわ」
「まぁエルフだしね」
そんなものだろうと俺は思う。概ねイメージ通りである。
『イベントマス!』
『隠れているエルフを3人見つけろ!』
「無理だと思うぞ」
覚えているだろうか。以前に、認識をずらす魔法を使って森に隠れたエルフは見つからないと、ルッカ自身が言っていたことを……。
「まぁやるだけやってみなさいよ、もしかしたら見つかるかもしれないわよ(笑)」
「見つかると思ってないよね」
口を手で押えて笑うのを堪えているフィオナ。
「いやいや、分からんぞ。物事に絶対はないからの(笑)」
「カルミラもか……」
ルッカは光のない黒目でジトーっと二人を見ていた。
『はいスタート!(笑)』
アナウンスにまで笑われるとは……。
既に隠れているのか、エルフは姿形もない。
「く、全然見つからないんだぞ!」
必死に草をかき分けて探すが、一人も見つからない。
「早くしないと失敗になるわよ〜」
ニヤニヤ顔で煽るフィオナに、ルッカがむっとした顔になる。
「分かってるんだぞ!……こうなったら」
ルッカはアイテムカードを掲げた!
『アイテムカード、コンパスを使用しました!チャレンジのヒントを表示します!』
ルッカの前にウィンドウが出現する。周囲の地図と、3人分の数字。
「座標?」
俺のつぶやきに、ルッカが目を輝かせる。
「これで見つけられるんだぞ!」
ルッカが座標を頼りに探し出す。一人、二人と見つけ、残り最後の一人となった。
「あと一人が見つからないぞ……ここのはずなんだぞ」
座標ではルッカが今立っているあたりなのだが、エルフは見つからない。
「あら?よく見るとz軸がマイナスになってるわね」
フィオナが言うと、ルッカが「あっ」と気付いたようで、ハンマーを腰から引き抜く。
「マイナスってことはつまり、下なんだぞ!」
ドゴン!と地面を殴ると、木か何かで隠されていた穴があった。その中に、エルフが隠れていた。
「やったんだぞー!」
「あーはいはい良かったわね」
喜ぶルッカに対し、何故かフィオナは楽しくなさそうな顔で祝福した。
『CLEAR!見事全員見つけることができた!プラス7万R!』
なかなかの額がプラスされた。もしかしたらイーリンの手番で終わってしまうかもしれないな……。
「嫌ですわ、ジメジメしてて最悪ですわぁ。わたくしがなぜこんな森を歩かなくてはなりませんの?」
マグノリアが嫌そうな顔で森の中に佇んでいる。
「そうだわ!こんな森燃やしてしまえばいいのですわ!名案ですわ!」
「なんて物騒なことを言い出すんだ……」
呆れて空いた口が塞がらないとはこういうことだな、と生まれて初めて思った。
そして迷いなく呪文を呟き始めるマグノリア。
「あ、そんなことしたら……」
フィオナが一瞬何かを言いかけたが、すぐに火の魔法が放たれた。大きなくす玉のような火の玉が前方へ飛んでいく。
「燃えてしまいなさーい!」
そのまま森の木へ……当たることなく、反射して返ってきた!
「森には守りの結界があるから……」
フィオナが言うが、もう既に後の祭り。
「え、ちょ、なぜなの!?マズいですわ、わたくしを守るのよ!」
ルッカを盾にしようと背後からガシッと捕まえるマグノリア。前にも見た光景だ……。悲劇は繰り返されるのだ。
「ぎゃぁぁぁ!」
2度目の肉の盾も、立派にこなしたのだった……。




