アイドル魔王
心の傷は癒えないが、状況を整理しよう。イーリンが残り9マス。そしてフィオナの使用したアイテムカードの効果で、サイコロが3つ。サイコロ運が良いイーリンなら、ゴールしてしまう可能性が高く、かつ賞金で恐らく優勝――
「だから、このアイテムを使う!」
俺はアイテムカードを天に掲げた!
『アイテムカード、逆巻時計を使用しました!手番が逆順になります!』
『ええっ!』
ホワイトボードに驚くリアクションを書くあたり、余裕があるのだろうか。とにかく、イーリンの優勝を阻止して、次に賭けよう。
「といことは……私ね!」
フィオナが嬉しそうにそう言うと、サイコロが現れる。残り1マス、何をどうしてもゴールだ。フィオナがサイコロを転がす。出目は『2』。
景色が変わり、アビスカルドの城内……に移動すると思っていたのだが、フィオナの周囲にお城感がない。というか、ドームのような……そう、実際行ったことは無いが、アイドルや歌手がステージに立つ、あのドームだ。人間なら1万人くらいは収容できそうな、明かりの付いてない暗いドームの中心に近い場所にフィオナが立っている。
「ここはどこかしら?」
「予想はついておるじゃろうが、間違いなく魔王城の中じゃ」
なんとなくカルミラの顔が複雑そうに見えた気がしたが、ドームの明かりが急に光りだして、「わー!」という怒号のような歓声に思わず耳を塞ぐ。
「な、なんだ!?」
俺がびっくりしていると、ドームの奥のステージにスポットライトが当たる。
「魔族は凶暴、悪逆非道、手のつけられない厄介者……そんな間違った考えを持つ人間たちに!負けない愛を!妾は歌うのだ!」
ドーン!と爆発音がしたかと思うと、スポットライトの光だけだった奥のステージを、色とりどりの眩い光が駆け巡る。
フリフリの付いたピンク色の可愛らしいショートドレスを身にまとった美少女。背中に羽のあるその姿はまるで天使のようだ。
「魔王さまーー!!!」
「今日もかわいいです魔王さまーー!」
「うおおおお!魔王さまー!」
どうやらアレが魔王であるらしい。
「あの顔、見たことがあるわ……有名な魔族だって話だったけれど。魔王だったのね」
「ルッカもあるぞ」
どうやら魔王だとは知らなかっただけで、それなりに知名度があるらしい。ペンライトを振り回すモグラがいたり、「魔王さまLOVE!」と書かれた幕を貼っているモグラがいたり……。
「魔族に対する悪いイメージを払拭しようと、頑張っておるぞ。いい方法なのかは知らんがの……」
魔王がマイクのような、おそらく魔道具であろう何かを持ち、叫ぶ。
「妾が!魔王リリス・ミュゼリカである!無事アビスカルド城に辿り着いた褒美をくれてやろう」
『おめでとうございます!目的地です!到達した報酬として、10万Rが支払われます!副賞の授与が行われます!』
賞金と共に、アイテムカードがフィオナに渡される。
「せっかく妾の城まで来たのだ、舞台にあがるのだ!」
「ええ?私が?」
困惑するフィオナだが、魔王リリスはフィオナを舞台上に上げようと腕を引っ張る。
「ほら、観客も待っているのだ!」
グイグイ腕を引っ張られ、フィオナは仕方なく舞台に上がる。
「魔族のみんな〜!今日はゲストもいるからね♪楽しく歌って踊って〜?」
「「「大いに騒いで盛り上がれ!」」」
魔族たちのコールに会場が揺れる。
「私も踊るの!?」
「当然なのだ!ゲストとして参加するのだ!」
嫌そうなフィオナだが、逃げられないと知ると諦めた顔で一言。
「はぁ……どうせだし、道連れよ」
フィオナが、獲得したばかりのカードを掲げる。
『アイテムカード、人寄の笛を使用しました!全てのプレイヤーが集合します!』
「うわっ!」
気付いたら、俺も舞台の上に立っていた。一緒に飛ばされたカルミラもルッカも、微妙な顔をしている。イーリンだけはいつもの線と点の真顔だ。
「うーむ……男はいらんのだ。正面の席を開けてやるから、見ているといいのだ」
「いらんって……」
俺は踊らされるよりはマシかと、空いてる席へ行き座った。イーリンもやって来て『ひざの上のせて』と言うので、持ち上げて膝の上に乗せてやる。
「それじゃあ、着替えるのだ!」
リリスが指をパチッと鳴らすと、フィオナ、ルッカ、カルミラの服がリリスとの色違い衣装に変わった。
「スカートが短いわ!?」
「下がスースーするんだぞ……」
短いスカートには慣れないようで、恥ずかしがったり不安そうにスカートの裾を手で押さえている。
「わしは綺麗じゃし、見せびらかすのも悪くはないのう」
カルミラだけは絶対の自信があるのか、むしろポーズを決めている。
「ほら、音楽を流すのだ!」
舞台に軽快な音楽が流れ、リリスが踊りだす。それを見ながら見よう見まねで続く3人。最初はぎこちなく、スカートを気にしたりしていたが、徐々に動きが揃ってくる。照れが入りながらも、動きが綺麗で美しいフィオナ。元気に体を隅々まで使って飛び跳ねるルッカ。それっぽい動きの間にセクシーポーズを挟むカルミラ。その美しい光景に、なぜカメラがないのかと悔しく思う俺だった。
途中経過
フィオナ 資金29万
凪 資金マイナス21万
イーリン 資金43万
ルッカ 資金28万




