表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第三章 二人の王女と異世界探検
69/95

駆け上がるよ何処までも

気が付くと、俺は崖の上に転がっていた。脳裏には先程襲いかかってきたワイバーンの姿が蘇る。


「うおっ!」


慌てて全身を確認するが、怪我はない。落ちている途中で意識を失った為に、なんとか無事に(?)切り抜けられたようだ。


「あれしきの事で情けないですこと。殿方らしく勇敢に戦って喰われればよろしいのよ」


無茶苦茶な事を言うマグノリアを、ついジトっと睨んでしまう。マグノリアがサイコロを転がしたのだ、お前のせいだろと言いたくもなる……。


「な、何よ!睨むなんて無礼よ私は王女なのよ!?打ち首にするわよ!」


目を釣り上げてキーキー叫ぶ。なんだか本当に打ち首にされそうな気がして、必死に心を落ち着かせて謝った。


「ごめんなさい、睨んだわけではないんです。美しくて見とれてしまいました」

「見とれ……ならしょうがないわね、わたくしは美しいものね。更に綺麗になって差し上げますから、美容の為に3万Rほど頂きますわぁ」


一瞬でにこやかな笑顔になるマグノリア。そして盗られるお金。


「そうよね、綺麗な女を見るとすぐ見とれてボーッとするわよね、カルミラの時も……」


なぜか違う爆弾に火がついた気がする……


「もちろん、フィオナの時もね。最初に見た時はあまりの綺麗さに言葉も出なかったよ。どうしてもその、男だしさ」


俺は何を言っているのだろうか。頭が回らなくなってきた。


「ちょ、綺麗って凪……ああもう、皆が見てるじゃない!」


慌てふためいて、両手をバタバタさせて顔を真っ赤にするフィオナは、やっぱり綺麗だった。


『チャレンジ失敗!慌ててお金を落としてしまった!マイナス4万R!』


お金を失うよりも悲惨な目にあった気がする。


 なんとかフィオナの機嫌も治り、続いてイーリンの手番。前回と同じように執事がサイコロを丁寧に転がす。出目は『6』。


「イーリンってほんとにサイコロ運強いね」


最初からゲームを通して、イーリンはずば抜けて5や6を出す確率が高い。


『すごい?すごい?』


頬を掻くような仕草をしながらホワイトボードを手に持つイーリンは、すごく可愛い。


「うん、すごいよほんと」


えへへと照れるイーリンの周囲が、真っ暗な空間に変わった。空は暗く、陽の光が差し込まない空間。辺りには立派な装飾の施された、小さな城とでも呼ぶべき建造物が複数建っている。その中でも一際大きい、まさに城という感じの建物の前にイーリンは立っていた。


「おおお、懐かしいのう……あれは我が家じゃ……」


号泣である。ゲームとはいえ帰れなくなった故郷を再び目にすれば、あまりの嬉しさに泣きたくもなるだろう。


「ということは、ここは吸血鬼の街って事か」


建物の数自体は少ないが、どの城も非常に凝った作りをしていて、同じような物は1つとしてない。拘りを感じる。


「特に名前がある訳では無いが、吸血鬼の自治区じゃ。運営なんかは我が家で行っておる。まぁ運営とは言っても、意見をまとめるだけじゃがの。一応王城に税を収めておるぞ」


税を収めて、その代わりにそれ以外の事は全て自分たちで決めるというのが、吸血鬼たちのルールらしい。


『チャレンジマス!』

『吸血鬼の困り事を解決しろ!』


「困り事のう、やはり吸血じゃろうかの」

「血が吸えないから?」


正確には同意がないと吸えない、だが。


「別に吸えなくても普通の食事を摂ればいいでしょう?」

「おやつは我慢なんだぞ」


それぞれの指摘に、いやいやと首を振る。


「極論飲まなくても死なん、が!吸血鬼としての力は衰えていくのじゃ。全く血が飲めないとなると、全く力が使えなくなって最終的には……ただの夜行性の人間になるのじゃ」


なんと悲しい生き物なのだろうか。涙を禁じ得ない。


「なんとか血を分けてもらいながら、慎ましやかに生きているのが現状じゃ。労働を対価としたり、色々とギブアンドテイクの関係を築けるよう努力しておる」

「そうなのね……知らなかったわ」


難しい顔でフィオナがそう言うと同時、カルミラの姿が消えた。


「な、なんじゃ!?」


声がした方を見ると、イーリンのワイプの中にカルミラがいる。


「カルミラが吸血鬼の代表って事だぞ?」

「なるほどのう?ならば、改めて言おう。我らに血を!あびるほど飲める量の血を!」


イーリンが難しい顔で考えている。しばらくすると、バッと顔を上げる。なにか閃いたらしい。ホワイトボードになにかを書き込むと、執事に見せる。


「なるほど、理解しました。ご用意させて頂きます」


スッと姿が消えたかと思うと、すぐにまた現れる。


「こちら、ご所望の品です」


手渡されたのは、注射器?ホワイトボードに再び書き込むイーリン。


『血を直接飲まずに集める!』


これは、あれだ。献血だ。しかし、注射器があるなら献血という発想にはならなかったのだろうか。


「注射器は向こうには無いわ。でも、ないなら作ればいいわよね」

「た、たしかになんだぞ」

「そ、その手があったか!」


こちらの世界に飛ばされて、知識としては知っていたのだろうが、血を集めるという発想にはならなかったようで、膝を地面について項垂れている。悔しいらしい。


「帰ることが出来たら、やってみるのじゃ!ありがとう、ありがとう……!」


泣きながらお礼を言うカルミラ。こうして吸血鬼は救われた……のかな?


『CLEAR!』

『吸血鬼という種の存亡の危機を救った!吸血鬼たちから感謝され、謝礼金を貰った!プラス4万R!爵位が上がった!』


「どの国でも爵位って上がるんだ……」


そもそもこのゲームにおける爵位の重要性が謎なのだが。そもそも爵位を得たのはイーリンだけだし。


 その時、イーリンがアイテムカードを掲げた。


『アイテムカード、招き猫を使用しました!次ターン行動不能になる代わりに、報酬が倍に増えた!』


「な、なんだってー!?」


報酬が4万から8万に跳ねた!なんとイーリンはもう資金が43万、圧倒的だ。更に――


『侯爵になった!』


なんと、爵位まで2段階上昇していた。


「流石でございます、侯爵さま」


一体イーリンは何処を目指しているのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ