大空へ羽ばたけ
「ところで、メタルリザードってこの池の中に住んでるの?」
気になったことを聞いてみる。
「そうじゃ。普段は池の中から顔を出さんが、たまに池から上がって日光浴しておったりもする」
「メタルリザードは鉄を食べるのだけれど、湧き出す池の中に住むなんて、ここのメタルリザードは恵まれているわね」
食べ物が常に供給されているんだ、なんというか羨ましい。俺なら太ってしまいそうだ。
「じゃあ次は私ね」
フィオナが現れたサイコロを握って地面に転がす。出目は『3』。フィオナが移動し、周囲は光の届かない地中の景色になる。地中に、大きい澄んだ湖がある。
「人魚とセイレーンの住む地底湖、ネレイア湖じゃ。ネレイア湖は地下水脈から海に繋がっておる。ゆえに、魚も採れる。主な食事じゃな」
海の中を人魚が泳ぎ、湖から突き出す岩の上でセイレーンが歌っている。なんとも幻想的で美しい景色だ。
「ちなみに、セイレーンの歌を直接聞くと精神を病むわよ」
綺麗な歌声が聞こえるが、何か影響されているような様子は感じない。ゲームだから平気なのだろうか。何にしても、怖すぎる。
「人魚の剥がれた鱗は優れた素材でもあるんだぞ。戦争中はよく狩られてたらしいぞ」
世知辛い。人魚の肉は食べると不老不死になる、とか言われてたんだっけ。異世界だと鱗が貴重な素材と。可哀想すぎて涙が出そうだ。
『チャレンジマス!』
『セイレーンとカラオケ勝負!点数を上回れ!』
カラオケ?と思っていると、いきなり空中からカラオケボックスが落ちてきた。ズドン!と勢いよく。たまにテレビで見かける、透明な1人用のカラオケボックスだ。
「知識としては知っているけれど、未体験ね、カラオケは」
「そうだね、また今度皆で行こうよ」
「ルッカも行きたいんだぞ!」
『ぼくも!』
皆でカラオケに行く約束をしていると、セイレーンの一体が湖から上がり、カラオケボックスの中に入る。セイレーンのカラオケ……なにを歌うのだろう。ピッピッと、まるで知っているかのようにデンモクを使って曲を送信する。
『紅』
「え!?」
選曲が予想外過ぎて思わずビックリして叫んでしまった。もっとこうなんというか、オペラみたいなクラシックな感じの曲を歌うものだとばかり思っていた。
歌いだしたその声は、すごく綺麗に澄んでいて。叫ぶような声量が耳に心地よく響く。めちゃくちゃ上手い……
歌い終わってすこし息切れしながらも、やりきった感を出すセイレーン。点数は……『95点』!
「う、高得点ね……」
フィオナが入れ替わりにボックスの中へ入っていく。未経験のフィオナは何を歌うのだろうか。
『残酷な天使のテーゼ』
これまた意外な選曲だ。アニメの曲とか歌わなさそうなのにな。
「別に私の趣味って訳じゃないわよ!ルッカが何度もアニメを見ていて、私も覚えちゃっただけよ!」
言い訳のようにそう言うが、事実その通りなのだろう。カラオケで歌えるほど覚えてる曲が、ルッカの見ていたアニメの曲というのはフィオナらしい気もする。
所々忘れている所もあるのか、歌に詰まったりしながらも、なんとかフィオナは最後まで歌いきった。
『85点!』
歌声は綺麗だし良かったのだが、やはり歌詞をうろ覚えの部分が足を引っ張ったようだ。
『セイレーンとのカラオケ勝負に負けた!賞金として、セイレーンに3万Rを支払った!』
「厳しいわね……」
項垂れるフィオナに、励まそうと声を掛ける。
「初めてのカラオケなんだからしょうがないよ、今度皆で歌いに行った時にまた聞かせて欲しいな」
「凪がそう言うなら、練習しておくわ」
少し赤くなりながらフィオナはそっぽを向いた。
「じゃあ俺だね」
サイコロを振ろうとすると、マグノリアにサイコロを奪われた。
「暇だからわたくしが振ってさしあげますわ。感謝しなさい!」
嫌な予感がするが、拒否権なぞないので「どうぞお願いします」と穏便にサイコロを転がして貰う。出目は『3』。
俺はてっきり1が出ると思っていたので、少しホッとした。
景色が切り替わると、そこは切り立った崖の上。
「ひえっ」
と情けない声を出してしまう。下を見ると、地面からさらに裂け目があり、底が見えない。よく見ると、崖の中腹あたりに鳥の巣のような物が見える。
「ほー、あれはワイバーンの巣じゃな」
「わ、ワイバーン……」
冷や汗が流れる。
『チャレンジマス!』
『盗んだワイバーンの卵を制限時間中、死守しろ!』
目の前に大きな卵が現れる。両手でスッポリ持てるサイズ感だ。空中に『5分』のタイマーが出現する。そしてその前方には――
怒り狂ったワイバーンの群れがいた。
「絶対貫通槍、使うかの?」
「い、一応……」
震える手で槍を受け取り、卵とワイバーンの間に立つ。
すると、数頭のワイバーンが一斉に飛びかかってきた!
「いや無理無理無理無理!」
恐ろしすぎる迫力に、抵抗する気力すら起きない。ワイバーンは翼を広げて威嚇しながら迫ってくる。大怪我はしたくない、ならば――
飛ぶしか、ないよね……
大怪我よりはマシと、地面にぶつかる前に意識が飛ぶ事を真剣に祈った。




