爵位、意味あったんだ
イーリンの手番、サイコロが出現する。が、そのサイコロをイーリンではなく、いつの間にか隣に立っている執事服の男が手に取った。
「あれ、いつの間に?誰だろう」
「見るからに執事服であるな」
フィオナもルッカも不思議そうにするだけで口は挟まない。誰も分からないらしい。
『子爵になったから派遣されたんだって』
イーリンがホワイトボードに書いて説明してくれるが、そんなシステムがあるのか。ルッカは意味はないと思うと言っていたのだが……
「設定した覚えはないぞ」
頭を捻るルッカ。なんだかゲームが1人歩きしているような気がする。だが、イベントがランダムな以上はこういう事もあるのだろうと1人納得する。
「わたくしめが振らせて頂きます、子爵」
恭しく礼をし、そう告げるとサイコロを丁寧に転がした。出目は『5』。
初めて同じマスにプレイヤーが止まったが、何か影響はあるのだろうか。というか、マグノリア押し付けられないかな……〇鉄だといけるんだけどな。
俺と同じ村の中に、イーリンが移動する。イーリンのワイプが消え、隣に現れた。
「なんか凄い久しぶりな気がするね、イーリン」
イーリンは俺に駆け寄り、足に顔をスリスリさせながら『なでろ!』とホワイトボードに書きなぐる。可愛いなと思いつつ、頭を撫でてやるとイーリンは嬉しそうに頭を揺らした。
『イベントマス!』
『イーリン子爵に魔族たちが媚びを売っている!袖の下を受け取った!プラス3万R!』
俺はチャレンジだったのに、イーリンはイベントに変わっている。同じマスであっても、止まった段階でランダムにイベントは変わるらしい。なんなら子爵の称号も絡めてある、細かい。
「なんだか悪い貴族みたいだぞ」
「鼻につくわね……」
ルッカとフィオナの言葉に、イーリンがガーン!みたいな顔になる。何も悪くないのに可哀想だ。
「まぁまぁ、ゲームが勝手に言ってるだけだから……」
一応フォローは入れておく。言うまでもないであろうが一応だ。
「貴族とはそんなものであろう?わしが見た貴族は大体そんな感じじゃったぞ?」
「そ、そんな事ないわよ!民を思ういい貴族だってちゃんといるわよ!」
真面目王族のフィオナには許せない暴言であったのか、険しい顔で反論している。
「まあそう怒るでない、わしが見たのは大抵人間の貴族じゃから」
すごく、納得してしまった。なんというか、イメージ通りというか……少し悲しくなった。
マグノリアは相変わらず俺のそばから離れる様子はない。
「ねぇマグノリア、イーリンは子爵だよ。金も持ってるし、あっちについて行った方がお得じゃないかなぁ」
俺はイーリンを売った。だがマグノリアはフン!と顔を背ける。
「わたくし、成り上がりの貴族ほど嫌いなものはありませんわ。お金を持っているから貴族だなんて、そんな事はありませんのよ?」
おお?なんだか少しまともなことを言っている気がする。珍しい。
「お金を湯水のように使える経済力、古くからその地で培ったコネクション、そして何より大事なのは王家への忠誠心ですわ!成金どもはお金稼ぎしか頭にないゴミよ!焼却処分すべきだわ!」
まともなのかまともじゃないのか分からなくなったな。とりかく、マグノリアは移動する気はないらしい。くそう。
後、なぜかイーリンがダメージを受けている。
『ぼくはゴミなのか』
「そんな事はありませんぞ!子爵さまはまともな貴族ですぞ!」
ゲームである事を忘れてしまいそうなくらいにそれっぽい会話を繰り広げる二人。もしかしたらイーリンは今、本当に子爵になったつもりになっているのかもしれない。知らんけども。
「ルッカの番だぞ!」
ルッカがサイコロを転がす。出目は『2』。
「サイコロ運が良くないぞー」
ブーと膨れていると、景色が変わる。
辺りに広がるのは池のようだ。ただ、池の水が赤黒く、どう見ても血の池なのだが。
「なにこれこわい」
率直な感想が口からこぼれる。アビスカルドって、地獄なの?
「血のように見えるが、血ではないぞ?あれは鉄じゃ」
「あの赤黒いのが鉄?」
「底から、決して固まることのない鉄が湧き出ておるのじゃ。アビスカルドの名所とも言って良いじゃろう」
誰も来れんがな、と一人で大笑いしている。もし何も知らずにこの池を見たら、バラした人間でも大量に沈めているのかと思ってしまうかもしれない。
『イベントマス!』
『メタルリザードの卵を見つけた!かなりの高値で売り捌けた!プラス7万R!』
「やったぞー!」
最初は苦しそうだったが、徐々に追い上げているルッカに、心の中で頑張れと少しだけ応援した。
途中経過
フィオナ 残り16マス 資金24万
凪 残り15マス 資金マイナス5万
イーリン 残り15マス 資金35万
ルッカ 残り18マス 資金23万




