表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第三章 二人の王女と異世界探検
60/95

収穫されちゃう!

イーリンの出番になり、イーリンの目の前にサイコロが現れる。器用にサイコロを転がすと、出た数字は『6』。コロコロと軽快に転がったそれを見て、イーリンは1番遠回りのルートを選んだようだ。


「人族の国、リュクシア王国領を通るルートじゃな」


 カルミラの説明に、なるほどと頷きながらも、ふと疑問が浮かぶ。


「種族ごとに色んな国があるの?」


「あったり無かったりじゃ。エルフやドワーフはひとつの国に纏まっておるが、人間は3つの国に分かれておる。魔族の国もひとつなのじゃが、あまり纏まってるとは言えんのう。我が強い連中が多いのじゃ」


 魔族は魔王のいる国を中心に、力を持つ魔族が各自で自治領のようなものを運営しているらしい。小人族もどうやらひとつの国だけらしい。人間だけが複数の国に分かれているのは、欲深いからなのだろうかと少しだけ考えるが、正解は分からない。


 イーリンが止まったマスは、どうやら農村のようだ。視界いっぱいに広がる畑には、整然と並んだ作物と、それを世話する人々の姿がある。クワを振るい、土を耕し、収穫に精を出すその光景はどこか牧歌的で、ほんの少しだけ安心感すら覚える。


『チャレンジマス!』


 今のところは全てチャレンジマスだ。表示された文字がゆらりと歪み、内容へと変わっていく。


『収穫勝負!相手より多くの作物を収穫せよ!』


 イーリンの目の前に、よりによって大根の畑が見渡す限りに広がっている。


「大丈夫かな……」


 何がとは言わないが、ものすごく嫌な予感がする。というか、嫌な予感しかしない。


「イーリン、気をつけて!なんか嫌な予感がする!」


 イーリンはグッと腕を突き上げ、ホワイトボードを掲げる。


『まかせろ!』


 頼もしいのか不安なのか分からない返事だが、とりあえずやる気は満々らしい。


 ピーッと笛が鳴ると同時に、農民とイーリンの収穫勝負が始まった。


 イーリンは順調に大根を抜いていく。というか、やたらと早い。軽く触れただけに見えるのに、スポスポと気持ちいいくらい簡単に抜けていく。リズムよく次々と収穫していくその様子は、もはや職人芸と言ってもいいレベルだ。


『ふっ、よゆう』


 ホワイトボードで余裕アピールをする余裕すらある。このままなら普通に勝てるのではないかと誰もが思った、その時だった。


 事件が起こった。


 なんと農民が、イーリンを掴むとそのまま背中に背負っているカゴへと放り込んだのだ。


「え!?」


 あまりにも予想外の行動に、思わず声が漏れる。いやいやいや、今の流れでそれはおかしいだろう。


 しかし農民は何事もなかったかのように収穫を続けている。淡々と、ただひたすらに大根を抜いてはカゴに入れていく。そのカゴの中には――当然、イーリンも一緒に放り込まれている。


 次々と投げ込まれる大根に埋もれていくイーリンの姿が、ワイプ越しに見える。


『せめておいしくたべて』


「イーーリーーーーン!」


 悲痛な叫びが虚しく響く。


 結局、イーリンは途中から収穫どころではなくなり、そのまま大差で敗北した。


『チャレンジ失敗!マイナス1万R!』


 所持金が減り、イーリンはガクッと項垂れる。画面越しでも分かるくらいにしょんぼりしている。


『ど、どんまいなんだぞ』


 流石のルッカもこの展開は予想していなかったようで、どこか気まずそうに慰めている。


 なんとかイーリンをカゴから救出し、立ち直らせると、次はルッカの番だ。ルッカの目の前にサイコロが現れる。


「いくんだぞ!」


 勢いよく転がしたサイコロの出目は『5』。それを見た瞬間、ルッカの目がキラリと輝いた。


「狙うは当然、最速ゴールなんだぞ!」


 迷いなく俺と同じルートを選択し、魔の森へと足を踏み入れる。そして数マス進んだところで、ルッカは足を止めた。


『イベントマス!』


 初めてのイベントマスだ。チャレンジとは違い、プレイヤーの行動を伴わず結果だけが提示されるらしい。


『デスタイラントに行く手を阻まれた!身を隠して動けない!次のターンお休み!』


 その表示と同時に、ルッカの目の前にそれは現れた。


 山のような巨大な蜘蛛。8つの目が赤くぎょろりと光り、口元には鋭く長い牙が幾重にも並んでいる。そこから垂れる粘ついた液体が、地面に落ちるたびにじゅうっと音を立てる。


 ただ見ているだけなのに、背筋が凍る。実際に目の前にいるわけでもないのに、本能的な恐怖が全身を駆け巡る。


「普通だとまず逃げられないのじゃがな。出会ったら死ぬ以外の選択肢はないと言われておる、まさに死の権化なのじゃ」


 カルミラの言葉が現実味を帯びて聞こえる。説明されなくても、あれがどれほど危険な存在かは嫌というほど伝わってくる。


「怪我しなかっただけ良かったんだぞ」


 ルッカの言う通りだ。あんなものと戦わされていたら、確実に終わっていた。


「イベントの内容ってルッカは知ってるんじゃないの?」


「完全ランダムだぞ。自動で生成されてるから、ルッカも知らないんだぞ」


 さらっととんでもないことを言う。そんな高度な仕組みを組み込んでいるのかと、改めて感心してしまう。


「これで1順したんだぞ、これを目標金額の50万に到達するまで繰り返すんだぞ」


 そう言えば、目標金額をちゃんと聞いていなかったなと今更気付く。


「参加しないと言ったのはわしじゃが、暇じゃのう」


 隣でぷかぷか浮かびながら、カルミラが退屈そうに呟く。


「あはは、サポートよろしくね」


 軽く笑いながら返すが、まだ目的地までは遠い。ゲームは始まったばかりだ。


 途中経過


 フィオナ 残り23マス 資金8万

 凪 残り18マス 資金15万

 イーリン 残り26マス 資金9万

 ルッカ 残り15マス(1回休み) 資金10万

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ