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異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第二章 二人の王女と夏の思い出
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浴衣美人

お祭り当日。朝からテンションが爆上がりしているらしいルッカが鬱陶しいと、フィオナが愚痴を零しているのを聞きながら、俺は出かける準備をしている。


 そんな時、ひょこひょことイーリンが足元までやってくると、ズボンの裾をぐいっと引っ張る。


「ん?どうしたのイーリン」


 イーリンは抱えていたホワイトボードにキュッキュッと何やら書き込むと、こちらに向けてずいっと差し出した。


「えーと、『お土産よろしく』」


 ここ数日で文字をマスターしたイーリン。フィオナといいルッカといい、果てはイーリンまで学習能力が高すぎる。


「お土産って言っても、イーリンは食べたりできないよね」


 どうしようかなと考えていると、フィオナが「そうねぇ」と一緒になって悩みながら腕を組む。


「飲み物系ならいけるかもしれないわね。あとはかき氷とか」


 かき氷はどうかと思うが、ジュースあたりなら確かにいいかもしれない。


「ちゃんと買って帰るんだぞ!悪いけど留守番頼むんだぞ!」


 早く行きたい、と顔に書いてあるルッカが適当な返事をイーリンに返すと、不安げに眉が下がるイーリン。正確には眉の線が増えて、下がり眉を表現している。


「まぁ何かしらは買って帰るから」


 安心させるようにポンポンと頭を撫でる。すると眉が消えて、いつものイーリンの顔に戻った。


「じゃあ、行ってくるね」


 イーリンに声をかけ、家を出る俺たち3人。祭りに向かう人たちだろうか、夜だというのに人通りが多い。通行人の中には、ちらほら浴衣姿の女性がいるのが分かる。


「あれ、いいわよね。一度浴衣を着てみたいわ」


 俺は頭の中で、この辺に浴衣をレンタルできる店があったなと思い出した。


「着てみる?レンタルできるお店が近くにあるよ」


 そう言うとフィオナが笑顔でコクコクと頷く。


「ルッカも着るんだぞ!」


 どうせなら一緒に着てみたいらしい。俺は2人を連れて、お店へと向かった。


「いらっしゃいませ」


 店員に2人に浴衣をレンタルしてほしいことを伝えると、どうせならと俺にも甚平を勧められた。確かに3人で歩くのに1人だけ私服なのは勿体ない気がして、俺も甚平をレンタルする事にした。


 着付けはすぐに完了したのだが、2人の浴衣姿は恐ろしく破壊力があった。


 フィオナは、瞳の色と同じ深い緑色に和柄の入った浴衣を着ている。似合う似合わないの次元じゃない、評価するのがそもそもおこがましいと思える美しさだ。


 ルッカも、藍色の和柄が散りばめられた浴衣がとてもよく似合っている。普段の元気ハツラツな感じが浴衣を着ると鳴りを潜め、お淑やかな女の子という風に見える。浴衣マジックだな、と俺は感じた。


 3人で店を出て、道を歩く。通りかかる人々の中には、こちらを見ながら話をする姿も見られる。


「ねぇ、あの子ヤバくない?」


「浴衣超似合ってる!美人だよね」


 フィオナを見ながら、羨ましそうにそう話す女性たちもいれば、


「なんだあいつ」


「羨ましいねぇ、爆発しろや」


 恨みがましい目で男どもに睨まれる俺もいる。自然と3人でいることが当たり前になっていたが、改めて見ると2人は目立つ。外野の視線も分からなくはない。


 少し居心地は悪いが、楽しそうな2人の顔が見られるなら安いものだ。


「これ美味しそうなんだぞ!あれも!これも!」


 着いて早々に屋台を物色し始めるルッカ。フィオナは苦笑いしながら俺の隣を歩く。


「フィオナはいいの?」


「焦らなくても、店は逃げないわ。ゆっくり回りましょう」


 そう言って帯の端をいじって微笑むフィオナの顔は、少し赤らんでいるように見えた。


 フィオナと一緒に店を回りながら、チョコバナナを食べたり射的をして遊んだりと楽しむ。フィオナの射的の腕はかなり高かった。コルクを詰めて目を細める姿は、妙に様になっているように感じた。


 ポンッという軽い音とともに、景品の中でも1番大きいぬいぐるみの額を撃ち抜いた。


「普段から弓を使っていたりするもの。似たようなものよ」


 エルフと言えば弓。確かにその通りかもしれない。似たようなものなのかは置いといてだが。


「上手だねぇ。ほら、景品」


 店主から大きなうさぎのぬいぐるみを嬉しそうに受け取るフィオナ。よくこんな大きいぬいぐるみを倒せるものだと感心する。


「そういえば、中々ルッカは戻ってこないね」


「そのうち帰ってくるわよ、大量の食べ物を抱えてね」


 なんて会話をしていると、まるで聞いていたかのようにタイミングよくルッカが帰ってきた。


「おかえりルッカ……って、またすごい量だね」


 たこ焼きを食べながら、白いパックが複数入った袋を右腕に、綿あめの袋を左腕に下げている。さらに、たこ焼きのパックを持つ手の指の間にチョコバナナが刺さっている。


「持ちきれなくなったから一度帰ってきたんだぞ。全部食べたらまた行くんだぞ」


 呆れて口元に手をやるフィオナを尻目に、子供の頃に見た大食いドラマの「俺の腹は宇宙だぜ」というワードを思い出した。昔すぎてそれ以外の記憶はないのだが、今のルッカほど似合う人はそうそういないだろう。

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