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異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第二章 二人の王女と夏の思い出
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帰るまでが遠足

初めての海ではしゃぎ回ったフィオナとルッカ。沢山遊んだ二人は、少し疲れた様子を見せながらも笑顔で電車に揺られていた。最初は口々に楽しかった、ご飯も美味しかったと思い出しながら語り合っていたが、気付くとルッカが寝てしまっていた。


「もっと遊びたかったのかな」


ルッカは「流されるんだぞ」とか「魚沢山採ったんだぞ!」などとうわ言を漏らしながら、幸せそうな顔をしている。


「なんというか、ルッカらしい寝言ね」


最初は魚を掴まれそうになっていたルッカのことを思い出し、フィオナは思わず吹き出しそうになる。


「なんていうか、ルッカってちょっと子供っぽいとこあるよね」


その子供っぽさがルッカのいい所でもあるんだよなと俺は感じている。どんな時でも空気を和ませてくれるのはありがたいし、才能だと思うのだ。


「まぁルッカは王位継承権とは程遠い王族ですから。上位になると少しギスギスしたりすることもあるけれど、ルッカくらいだと兄弟仲も悪くないですし。親からも兄弟からも、天真爛漫に育てられたのでしょう」


そう言えば二十三位とか言っていたしな、と俺が納得していると、フィオナは「羨ましいわね」と少しだけ悲しそうな顔になったが、俺は何も言わずにフィオナの頭を軽く撫でた。


「ちょっと、ルッカじゃないのよ」


少し恥ずかしそうにフィオナが抗議する。


「せっかく楽しく遊んだんだし、今日くらいは嫌なことは考えないようにしようよ」


俺がそう言うと、フィオナも「そうね」と吹っ切るように笑った。


軽く話をしながら電車に揺られていると最寄りの駅に着いたので、ルッカを起こそうと肩を揺らす。


「ルッカ、降りるよ」


「なんだぞ……ルッカが捕まえたカニだぞ……分けてあげないんだぞ……」


まだ夢の中で食べているらしい。全然起きる様子もない。


「しょうがないなぁ」


俺は苦笑を浮かべてルッカを背中に担いだ。


「荷物は私が持つわね」


重いだろうに、三人分の荷物をフィオナが持ってくれる。


「ありがとう、さすがに歩いて帰るのは大変だし、タクシーにしようか」


駅を出てタクシーの並ぶロータリーに向かい、先頭に並んでいたタクシーに乗り込んで自宅の住所を告げる。


ゆっくり走り出したタクシーの中は静かで、今日の思い出がフラッシュバックのように頭の中をよぎった。


途中で運転手が「家族でお出かけですか、いいですね」と世間話を振ってきた時は、俺もフィオナも笑って誤魔化すしかなかった。傍から見れば子連れの夫婦に見えるのだろうか。


家の前に着き、ルッカを再び背負って家の中へ入る。幸せそうな寝顔のルッカを部屋に運んで布団に寝かせると、ダイニングに行って温かいお茶を二人分入れる。


「今日は本当に楽しかったわ」


微笑んでそう言いながら、お茶を飲むフィオナ。


「楽しんでもらえたならよかった。でも、まだまだこんなもんじゃないよ」


俺は悪戯っぽく笑う。


「日本では四季ごとに楽しみ方ってものがあるからね。異世界に帰るまでに、日本の楽しいところを余すところなく味わってもらうよ」


俺の言葉に、フィオナは笑顔をさらに深める。


「楽しみにしてるわ。帰れるかはまだ分からないけれどね」


そう言うフィオナの顔に、悲壮感は感じなかった。


「期待に添えられるよう頑張るよ」


俺は笑いながらお茶をすする。


「秋には何があるのかしら」


これからのことに期待を寄せるフィオナに、俺はちっちっちと指を振る。


「ちょっと気が早いよ。まだ夏は終わってないんだから」


フィオナは目を丸くして不思議そうな顔になる。


「まだ何かあるのかしら」


「あるある。ほら、これ見て」


帰りに覗いたポストに投函されていた一枚のビラを手渡す。フィオナは受け取って目を通した。


「これは素敵ね。すごく楽しみだわ」


「ルッカも興奮するだろうね、なんせ美味しいものがたくさんあるからね」


たくさんの出店が並び、夜には花火が打ち上げられる。近くの比較的大きい神社で行われる予定の夏祭りが、一週間後に迫っている。そう、楽しい夏はまだ続くんだ。

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