水着を買いに行こう
「さぁルッカ。可愛い水着を買いに行くわよ!」
昼下がり。水やりや家事を終えたフィオナは鼻からふん、と息を吐いて気合いを露わに宣言する。
「行くんだぞ!」
ルッカも気合十分と腕を上げて答えた。二人は早速家を出ると、暑い日差しの中ショッピングモールを目指して歩く。途中で大きな犬を見かけてルッカがはしゃいで触りにいき、飼い主に「ぜひ撫でてやってください」と言われてフィオナも撫でにいこうとするが、なぜか犬が唸ってフィオナが少し落ち込んだりしながら歩くこと十数分。モールにたどり着いた二人は水着売り場にやってきた。
「可愛い水着が沢山あるわね」
「だぞ〜」
二人で沢山の水着に圧倒されながらも、似合う水着を探していく。
「ルッカは欲しい水着があったら試着して見せなさい」
フィオナは忘れていない。以前服を買いに来た時、ルッカが変わりものの服ばかり選んでいたことを。
「分かったんだぞ。フィオナの水着も見てやるんだぞ」
素直に了承し、以前のようにチェックし合おうというルッカ。フィオナも頷くと、それぞれ水着を選び始めた。
数分後、合流した二人は試着室へ。先にフィオナが中に入り着替える。少しして試着室のカーテンが開いた。
「どうかしら」
スラッとしたモデルのような体型に、決して小さくはない、むしろ日本人の平均より少し大きいくらいの胸を持つフィオナの体のシルエットが、下品ではないが大胆なビキニ姿によって強調されている。水着自体もフリルが沢山ついた淡いピンク色で、とても可愛らしい。
「似合うし可愛いんだぞ。でも露出が多くないか気になるんだぞ」
ルッカの言葉にフィオナは少し考える。
「でも、凪も見るわけだし……一番似合いそうな水着を着るべきかしら……」
しどろもどろにそう言うフィオナに、ルッカが決定的な一言を放つ。
「凪以外の男にも見られるんだぞ」
「やめましょう」
あっさりそう言うとフィオナは試着室のカーテンを閉めて着替える。それから数着着替えてルッカに見てもらいながら、なんとか一着に絞り込むことが出来た。
「次はルッカよ。着替えてきなさい」
入れ替わりにルッカが試着室の中へ入り、カーテンを閉める。しばらくするとカーテンが開いてルッカが出てきた。
「……それは何なの?」
全身ウエットスーツを着込んだルッカが意気揚々と立っている。
「見ての通りウエットスーツなんだぞ」
「もしかして潜るつもり?」
呆れたようにフィオナはルッカを見る。そもそも百三十センチほどの子供に見えるルッカに合うウエットスーツがあるというのも驚きだ。
「海の中には、たくさん美味しいものがあるんだぞ。魚や貝、エビにウニ、カニとか色々……食べたいんだぞ」
海水浴場で潜って漁をしようと画策するルッカをフィオナが注意して止める。
「いっぱい人がいるんだから、危ないことをしちゃダメよ。漁は禁止!」
「えー!」
ルッカは不満を露わにするが、「ダメなものはダメよ!」ときっぱり切り捨てた。渋々諦めたルッカに再び着替えさせ、ルッカの分の水着も選ぶ。二人の水着が決まるとレジで購入し、そのまま家に帰った。
夕方、帰ってきた凪に水着を買いに行った時の話をした。
「フィオナって動物に好かれないタイプなのかな?」
小さく笑いながら凪がそう言うと、フィオナが少し拗ねたように頬を膨らませる。
「昔からそうなのよ。なぜか寄ってこないのよ!」
「向こうにもペットみたいな動物がいるんだね」
「ペットというか、小型の魔物なんだぞ。人懐っこい魔物を飼って可愛がっているんだぞ」
ペット談義に花を咲かせていた三人だったが、本題は水着だったと思い出したかのように話題が移る。
「それで、どんな水着にしたの?」
凪の質問に、フィオナは少し照れた様子でもじもじする。
「そ、それは当日のお楽しみよ!」
「凪に見られてもいいようにって必死に選んでたんだぞ」
「ちょっと!」
ルッカに暴露され、慌てて「そこまで必死だったわけじゃないわ!」と言い訳しながらルッカにチョークスリーパーを決めるフィオナ。
「く、苦しいんだぞ」
床を叩くルッカを見ながら、凪の頭の中でカンカンカン、とゴングの音が聞こえた気がした。




