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異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第二章 二人の王女と夏の思い出
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夏本番

季節は少し進み、セミの声がうるさく感じる今日この頃。うだるような暑さの中、フィオナは白く清楚でシンプルなワンピースを身にまとい、麦わら帽子を被ってベランダでイーリンに水をあげていた。


「暑い……暑すぎるわ……」


向こうでも四季はあったが、日本ほど気温の差はない。夏は暖かく、冬は肌寒い程度だった。もちろん地域にもよるのだが。


「イーリンは元気ね……」


水をもらってご機嫌のイーリンは、ぶるんぶるんと頭を揺らし、水が辺りに飛び散る。


「ちょっと、ワンピースが濡れてしまうじゃない」


少し距離を取ると、イーリンが頭を揺らすのを止めて大人しくなった。


水やりを終えると、じょうろを片づける。イーリンも土からすぽっと出てきて、プランターから這い出てくる。ダイニングに戻ると、ルッカがデニムのショートパンツに黄色のシャツを着て、扇風機の前に転がっていた。


「暑いんだぞ……」


夏本番になると、語彙力が低下する。人類みな例外なく。


「ルッカ、だらけすぎよ。もう少しシャキッとしなさい」


冷蔵庫からお茶を取り出してコップに注ぐ。どうせ欲しがるだろうとルッカの分も注いでいると、案の定「ルッカの分も入れて欲しいんだぞ」と声が掛かったのでそのまま渡す。


「そんな調子だと、これからもたないわよ。まだ暑くなるみたいだし」


今日の気温は三十二度ほどだが、明日は三十四度を越えると天気予報では言っていた。


「まだ暑くなるんだぞ……」


うげーという顔をするルッカ。


「いつまでも転がってないで、少しは動きなさいな」


ルッカは転がったまま動こうとしない。フィオナは奥の手を使うことにした。


「今から買い物に行きましょう」


「えー、こんな暑い中をだぞ?もっと涼しくなってからにするんだぞ」


予想通り渋るルッカに、フィオナは笑顔で言う。


「アイスクリーム……食べたくない?」


「行くんだぞ」


かなり食い気味で答えたルッカに苦笑しつつ、お出かけの準備を始める。上から薄いカーディガンを羽織り、ルッカがそのまま出ようとするのでルッカにもお揃いで色違いのカーディガンを羽織らせる。


外に出ると、殊更セミの声が大きく聞こえる。近くの木で大合唱しているらしい。


「まずは買い物を済ませるわよ」


そう言うと、足取りの重いルッカの手を引いて歩き出す。傍から見ればまるで親子のようだ。似ている訳ではないが。


スーパーに着くと、カートにカゴを置いて必要な物を入れていく。例によってルッカがお菓子ばかり入れようとするので止めようかと思ったが、今食費を負担しているのはルッカだし止めるのも違うかと一瞬考える。結局、健康面を考えて購入する数を制限する事で落ち着いた。ルッカは渋ったが説明するとすんなり言うことを聞いてくれた。悪い子ではないのだ。


一通り買い物を終え、スーパーを出るとそのまま商店街の方へ歩く。前方に目的のジェラート専門のお店を見つけて、二人で中に入る。


「さすがに店内は涼しいわね」


ルッカも生き返ったというような顔で同意する。


「どれも美味しそうなんだぞ」


ショーケースに並んだ色とりどりのジェラートを見て、テンションが上がっている。


「ほんとね。私はこのブルーベリーにしようかしら」


「ルッカはマンゴーにするんだぞ!」


それぞれが決まったところで注文し、受け取ると僅かにある飲食スペースに行き、テーブルを挟んで椅子に座る。


「美味しいわ。今日この日の為に生まれてきたんじゃないかとすら思えるわ……」


夏の日に食べるアイスは別格なのだ。かなり大袈裟にそう思ってしまうくらいには。


「生きてきて良かったんだぞ……」


ルッカも同じように感じたようだ。二人は買った食材が傷まないように、味わいながらも手早く食べる。


「美味しかったわ。ぜひまた来ましょう」


「絶対来るんだぞ」


再度の来店を誓い、店を後にした。


家に帰り、食材を冷蔵庫にしまい込む。フィオナは家を掃除し、ルッカは壊れたゲーム機や家電を修理したりゲームを遊んだりして過ごした。


「ただいまー」


「おかえりなさい」


凪が帰ってきたので出迎える。手早く料理を作ってテーブルの上に運びながら、今日あった出来事を話して聞かせる。


「そうかー、夏に食べるアイスは美味しいよね。美味しかった?」


「すごく美味しかったんだぞ!」


ルッカの笑顔が眩しい。その笑顔を見ながら、凪が話を切り出す。


「今度の休みに、海でも行こうか」


フィオナは「かわいい水着を買わなきゃ!」と気合いを入れ、ルッカは「わーい楽しみなんだぞ!」と純粋に喜んだ。

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