懐かれた?
ルッカと二人で、惣菜エリアを見て回る。このサラダはフィオナが好きそうだとか、この肉も美味しそうだとか、わいわい選んでいると、意外と時間が掛かってしまっている事に気づく。
「あんまり待たせたら悪いし、そろそろ帰ろうか」
ルッカは「分かったんだぞ」と返事をしながら、目線はどこかの店を追っているようだ。見ている方向へ目を向けると、老舗のアイスクリームを売っているお店だった。俺は苦笑しながらルッカの頭にぽんっと手を乗せる。
「お行儀は良くないけど、食べながら帰ろうか」
「いいんだぞ!?」
ものすごく喜ぶルッカを見て、俺もなんだか嬉しくなる。フィオナの分には別に抹茶味のモナカをお土産に購入し、俺とルッカはアイスクリームの乗ったコーンを片手に持ちながら、もう片方の手で荷物を持つ。
デパートを後にすると、アイスを食べながら家に向かって歩き出す。
「アイスは美味しいけど、片手だと不安定だしちょっと重いね」
ルッカも片手で肉寿司やその他の惣菜が傾かないように気を使いながら、必死にアイスを食べている。
「美味しいものの為ならしょうがないんだぞ……!」
少しキリッとしたかっこいい顔でそう言いながらアイスを舐めるルッカを見て、俺は少し笑ってしまった。
「ただいま」
「帰ったんだぞー」
家に帰ると、フィオナはリビングに出てきてテーブルについている。立ち直れたかな、と少し心配になりながらフィオナに目を向けると、足元で何かがじゃれついているのが分かった。
「何か足元にいるよ?犬や猫……じゃないよね?」
明らかにフォルムが違う。というか、二足歩行している気がする。
「お帰りなさい。出迎えにいけなくてごめんなさいね」
そう言うフィオナは、少し落ち着いたようには見えるが、視線が揺れている。ベランダの家庭菜園の事で言いたい事があるのか、これからの事を考えているのか。俺には分からないけれど、ひとまずフィオナには笑顔になってもらいたい。
「色々買ってきたよ。なんと、デパ地下のちょっとお高いお惣菜だよ!」
少し明るく振る舞おうと、わざといつもよりテンション高めにそう言うと、フィオナは嬉しそうに微笑む。
「気を使わせて悪いわね、ありがとう。さっきは取り乱してごめんなさい」
そう言ってフィオナは謝罪する。
「あれは事故みたいなものだぞ。確かに考えればああなる事は予想できたかもしれないんだぞ。でも、なるかもしれないだけで、誰かが検証した訳ではないんだぞ。普通に育つ可能性だってあったんだぞ」
ルッカが持論を述べながら、フィオナは悪くないと言う。そもそもフィオナとルッカがいた世界と、この世界で同じ条件だったとしても、同じ現象が起こる保証はないのだ。俺もその意見に同意する。
「まぁ、反省は後にしてさ。せっかくだし、食べちゃおうよ」
俺はお土産のモナカアイスだけ冷凍庫にしまい、惣菜たちをレンジで温め始める。
「ところで、その足元の……生き物?は結局なんなの?」
会話の間もずっと気になっていた。じゃれつく何かが机の下から出てきて、フィオナの腕にジャンプして掴まった。それは収穫の時にフィオナが握っていた大根……だと思う。表情が全然違うけど。
「なんだか懐かれちゃったみたいなのよ……多分?」
疑問形なのは、多分喋らないからだろう。点と線で出来たような顔の大根は、フィオナの腕にぶら下がったまま、なぜか懸垂をしている。
「なんで懸垂……?鍛えてるとか?」
そんな訳ないかなと思いつつ観察していると、足にぎゅっと抱きついたり、足裏をくすぐって遊んだり、靴下を脱がせようとしたりしている。最後のは少しフィオナも怒ったが、なんだか仲が良さそうに見えるのは気のせいだろうか。




